読書の勧め

「東郷平八郎」

田中宏巳著「東郷平八郎」吉川弘文館 刊を読み終えた。 著者は経歴をみると防衛大学教授などを勤めた軍事史の専門家で太平洋戦争に関する著作も多い。 この本は日露戦争の日本海海戦を指揮してロシアバルチック艦隊に完勝して世界的に名声を博した東郷平八郎…

「日本の参謀本部」

大江志乃夫著「日本の参謀本部」吉川弘文館 刊を読み終えた。 著者は日本の軍事史研究では著名なひとりで2009年に死去されているが、沢山の著作があり私も日本の軍事史にはかねてより興味があり「日露戦争の軍事史的研究」などを読んできた。 この本は日…

『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』

何か題名からしてどうかな?と思うような本だが『東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』(株)KADOKAWA刊を読み終えた。 といってもとても内容を体系的に理解したとは言えず、部分的にその箇所、その意味がようやく少し理解出…

『「昭和天皇実録」を読む』

原 武史著『「昭和天皇実録」を読む』岩波新書 を読み終えた。 著者は元日本経済新聞の社会部記者で昭和天皇の最晩年を取材、後に日本政治思想史の専門家となる。 昭和天皇実録は云うまでもなく宮内庁が編纂した昭和天皇の伝記で、2014年に24年の歳月…

私の代表的日本人・柴 五郎

月刊誌・文藝春秋には今年8月号から作家で数学者でもある藤原正彦氏が「私の代表的日本人」を連載されている。 第一回が江戸時代の数学者・関孝和、第二回が江戸時代の米沢藩主・上杉鷹山、そして今回10月号が第三回の柴五郎である。 会津人・柴五郎はあ…

司馬遼太郎さんの随筆⑥国民国家

江戸時代は身分社会でいわゆる士農工商の差が歴然としていたとされる。一般的に庶民といわれる農工商に属する人々は、年貢を始めとする税を搾り取られ窮屈な世渡りを強いられていると否定的に捉える見方が一般的である。 一方この事を肯定的に見て、それ以前…

「AIは人類を駆逐するのか?/自律世界の到来」

太田裕朗著「AIは人類を駆逐するのか?/自律世界の到来」幻冬舎 刊を読み終えた。 著者はこの本が刊行された2020年6月当時は研究者を経てドローン関連スタートアップ企業の代表で、現在は退職してノーベル賞授賞者・中村修二氏と、レーザー核融合炉の商…

塩野七生・「能力」と「素行」

イタリア在住の作家・塩野七生さんは月刊誌・文藝春秋に毎号「日本人へ」と題したエッセイを連載されている。 内容は海外からみた場合の日本人に警鐘を鳴らすものが多いが、大部の「ローマ人の物語」「ギリシャ人の物語」「十字軍物語」などを書かれた作家ら…

「そしていま一人になった」

女優の吉行和子さんが書いたエッセイ集「そしていま一人になった」集英社刊を読み終えた。たまたま図書館で高齢者向けに面白そうな題名と、名前を知っている著者に牽かれて借り出したものである。 題名は、何れも有名人である家族三人に先立たれたことを表し…

「鎌倉幕府の滅亡」

細川重男著「鎌倉幕府の滅亡」吉川弘文館 刊を読み終えた。 著者は鎌倉時代を専門領域とする歴史家らしく、本のあとがきに、「卒論・修士論文・博士論文を含め、これまで発表してきたすべての研究論文・研究書は、本書を書くための基礎作業であったといって…

司馬遼太郎さんの随筆⑤・統帥権(とうすいけん)

昭和史家や昭和史に造詣の深い作家、評論家が日中戦争や太平洋戦争を論じる場合善かれ悪しかれ必ずその対象の一端が統帥権に当てられる。 統帥権とは軍隊を動かす権限のことで、明治憲法下でプロシア(ドイツ)憲法に倣って規定された条項では、この軍隊を動か…

「村・百姓たちの近世」

長く中断していましたがぼちぼちと復帰しようと思います。今までと違い2~3日に一回のペースで無理せず気長に行きたいと思いますのでどうぞ宜しくお願いします。 水本邦彦著「村・百姓たちの近世」岩波新書 刊を読み終えた。 著者は日本近世史の専門家で村社…

中断中の独り言・「俳句世がたり」と「新茶汲む」

住んでいる施設に入居して一年半近く、俳句サークルに入って一年余りとなり初めて出逢う俳句に苦吟している。 サークルの先輩居住者の方から俳句の魅力再発見とキャッチコピーの付いた、小沢信男著「俳句世がたり」岩波新書刊と、配偶者の方が詠まれた手作り…

中断中の独り言・芥川賞受賞作「ハンチバック」

文藝春秋9月号に以前芥川賞を受賞したとニュースなどで話題になっていた、市川沙央(いちかわさおう)さんの「ハンチバック」が掲載されており読み終えた。 若い頃から何度も「純文学」というカテゴリーに入る小説にチャレンジしてきたが、幾つかの例外を除き…

「明治国家をつくった人びと」

瀧井一博著「明治国家をつくった人びと」講談社現代新書 刊を読み終えた。 幕末から明治にかけて西洋の文物を導入して、それを制度化することによって自立し、国際社会の一員になることは当時の国家的願望であり、藩閥政府、在野の民権指導者達の共有すると…

「家康はなぜ乱世の覇者となれたのか」

安部龍太郎著「家康はなぜ乱世の覇者となれたのか/世界史の視点から読み解く戦国時代」NHK出版 刊を読み終えた。 小説家・安部龍太郎さんは安土桃山時代の画家・長谷川等伯を描いた「等伯」や、遣唐使の時代を紐解いた「ふりさけ見れば」などの作品で当代き…

「幕僚たちの真珠湾」②

昨日8月15日の続き、 国家の曲がり角とも言うべき昭和15年(1940)から昭和16年(1941)にかけての陸軍中枢幕僚が関係した重要施策をピックアップする。 ・日中戦争を早期に解決するというのが当時の大きな課題であったが、陸軍が国策として提示…

「幕僚たちの真珠湾」①

波多野澄雄著「幕僚たちの真珠湾」吉川弘文館 刊を読み終えた。 図書館で借りた本なので書き込みが出来ないため、通常気になった箇所には付箋を貼って後でその部分を読み返して剥がすのを常としているが、この本はその付箋の数が41と近来にない新記録で、…

「出雲尼子(あまご)一族」/夕虹

ふるさと厚狭(現在山口県山陽小野田市)に縁があった出雲国(いずものくに・島根県)出自の戦国武将・三澤氏の足跡をたどるとどうしても出雲を本拠地とした戦国大名・尼子氏と向き合わざるを得ない。 これは一度尼子氏に関する本を読んでみなければと思い図書館…

司馬遼太郎と俳句

八月の俳句会で世話人の方から「俳句」という月刊誌の2017年10月号に掲載されていた「司馬遼太郎と俳句」と題する、司馬遼太郎記念館館長の上村洋行さんと俳人・宇多喜代子さんの対談部分をわざわざ綴じ直して頂いた。 私がブログで時折司馬遼太郎さん…

なでしこジャパン準々決勝戦/「なでしこの告白」

昨日のなでしこジャパンW杯準々決勝スウェーデン戦はTVに釘付けだったものの、全く残念ながら2ー1で敗退することになってしまった。 前半圧倒的に押し込まれ2ー0だったが、後半は見違えるような動きが随所に見られ、アンラッキーなシーンも2度ほどあっ…

代表的日本人100人②・緒方貞子

文藝春秋八月号の特集「現代の知性24人が選ぶ代表的日本人」で複数の人から名前が挙がっている人物を見ると、和算・関孝和、源氏物語・紫式部、古事記伝・本居宣長、最後の将軍・徳川慶喜、真言密教・空海などである。 個人的には鳥羽・伏見の戦い後大阪城…

映画「スパルタカス」

NHKBSプレミアムで放送された「スパルタカス」を長い間録画したままだったがようやく観終えた。 1960年のアメリカ映画で、云うまでもなく古代ローマの実在の人物で奴隷剣闘士であったスパルタカス(スパルタクス)を中心にした大反乱「スパルタカスの反乱…

代表的日本人100人・小平奈緒

文藝春秋八月号に、「現代の知性24人が選ぶ代表的日本人100人」と題して特集が組まれている。 藤原正彦、保阪正康、坂東眞理子、原田マハなど文藝春秋で比較的よく見かける諸氏が徳川家康などの歴史上の人物から大谷翔平まで色々な代表的日本人100人…

司馬遼太郎さんの随筆④浅井長政の裏切り

司馬遼太郎さんの大作・「街道をゆく」のなかの「近江散歩」を読んでいる。近江国(おうみのくに)は現在の滋賀県の旧国名である。 近江は元々「近淡海国」(ちかつあふみ)と呼ばれ都に近い淡水糊・琵琶湖を表した国名である。 余談に成るが現在静岡県の一部に…

「戦国武将三澤氏物語」⑤厚狭へ

7月31日の続き 天正17年(1589)豊臣秀吉に従属した毛利輝元は中国八ヶ国の太守として広島城を築城して吉田郡山(よしだこうりやま)城から移ることになる。 三澤氏第十代為虎はこの際、築城指南役を命ぜられ、家臣100人卒600人を引き連れ奔走し…

「怪しい戦国史」

本郷和人著「怪しい戦国史」産経新聞出版刊 を読み終えた。著者は東大史料編纂所の教授で最近色々なマスコミにも登場している日本中世史の専門家である。 表題そのものが怪しいが、著者が産経新聞に連載中の「本郷和人の日本史ナナメ読み」というエッセイの…

「児玉源太郎 明治陸軍のリーダーシップ」

大澤博明著「児玉源太郎 明治陸軍のリーダーシップ」山川出版社刊 を読み終えた。 私は山口県の出身なので、世間には多少否定的な受けとめがあるいわゆる長州閥について、つい擁護したくなる潜在意識を持っているが、明治維新を経て明治から大正、昭和初期に…

「戦国武将三澤氏物語」④尼子・大内・毛利の狭間で

7月20日の続き 1470年頃には出雲国(いずものくに・島根県)の国人(こくじん・在地領主)のなかで中心となるような成長を遂げた三澤氏であるが、応仁元年(1467)の応仁の乱に始まる戦乱の時代は、数ヵ国を一元的に支配する戦国大名の争いの狭間で揺れ…

土用のことなど・「春夏秋冬 土用で暮らす」

住んでいる施設の食堂で「土用丑の日」のうなぎ料理の予約受付があったり、歳時記で「土用芽」を知ったりして否応なしに土用に関心が向いていた中、バス待ちで立ち寄った図書館で土用という文字に牽かれて冨田貴史、植松良枝著「春夏秋冬 土用で暮らす。五季…