女優の吉行和子さんが書いたエッセイ集「そしていま一人になった」集英社刊を読み終えた。たまたま図書館で高齢者向けに面白そうな題名と、名前を知っている著者に牽かれて借り出したものである。
題名は、何れも有名人である家族三人に先立たれたことを表しており、この本の全五章の内三章がこの家族とのエピソードなどの回想に費やされている。
・兄・淳之介ー芥川賞作家
・妹・理恵-詩人、小説家芥川賞受賞(兄妹受賞)
私が面白いと感じたのはどちらかと云えば残りの二つの章で
第三章「劇団民藝からはじまった女優人生」では
・我慢強い性格が形成されたという小児喘息の苦しみ
・劇団民藝での宇野重吉さんとの出会いと一生忘れない言葉「きみはヘタクソだから、他人の何倍も何百倍も、役について思いなさい。そうすると、その役の心が、客席に伝わって行くものだよ」
・初めての映画は「にあんちゃん」で貧しい朝鮮人の子供達を助けている保健婦の役ーー(私は小学校で「にあんちゃん」を間違いなく見ているのだが、残念ながら保健婦さんの記憶がない)
第五章「人生の残り時間を楽しむ」では内容が身近に感じられる話題だけにより興味を持って読ませて貰った。
・20年以上前から趣味で句会に参加して以来面白くなって今も続いている。俳号が窓烏(窓がらす)
コーヒーに少しの未来冬木立
・仲よしの岸田今日子さん、富士眞奈美さんと三人で行く海外旅行のあれこれ珍道中エピソード、テレビ放送もされたらしい。
・山田洋次監督と嬉しい奇跡の出会い「東京家族」に出演ーー(この映画は私も観た、小津安二郎監督への敬意が込められた作品)
・終活の一環で妹・理恵の蔵書を処分した。一部屋が本で埋まっており人にお任せしたらあっという間にトラックで運び去られ心が痛んだ。ーー私自身が蔵書を処分した時と全く同じ状況で心の痛みを少し思い出してしまった。
🔘今日の一句
天高し一文字白く関空へ
🔘健康公園も秋の衣替え