2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「戦国武将三澤氏物語」④尼子・大内・毛利の狭間で

7月20日の続き 1470年頃には出雲国(いずものくに・島根県)の国人(こくじん・在地領主)のなかで中心となるような成長を遂げた三澤氏であるが、応仁元年(1467)の応仁の乱に始まる戦乱の時代は、数ヵ国を一元的に支配する戦国大名の争いの狭間で揺れ…

土用のことなど・「春夏秋冬 土用で暮らす」

住んでいる施設の食堂で「土用丑の日」のうなぎ料理の予約受付があったり、歳時記で「土用芽」を知ったりして否応なしに土用に関心が向いていた中、バス待ちで立ち寄った図書館で土用という文字に牽かれて冨田貴史、植松良枝著「春夏秋冬 土用で暮らす。五季…

「昭和の怪物 七つの謎」

保阪正康(ほさかまさやす)著「昭和の怪物 七つの謎」講談社現代新書 を読み終えた。著者の保阪正康さんはノンフィクション作家だが昭和史研究家の側面も持たれ先の戦争に関わる著作も多く何れも説得力がある。 題名はかなり奇をてらったように見えるが内容は…

元職場の同僚との会合/吾亦紅(ワレモコウ)

昨日は定年まで勤務していた会社の元同僚二人と計三人で、久し振りの情報交換飲み会で大阪天王寺へ行ってきた。 一人は年下、もうお一人が年上で私が年齢的に中間に当たるが、ある時期同じ商品を担当して切磋琢磨した仲になる。 天王寺には大阪に住んでいた…

司馬遼太郎さんの随筆③「芸備(げいび)の道・安芸(あき)吉田」

司馬遼太郎さんの大作「街道をゆく」の第六巻に「芸備の道」がある。ここでの芸備とは旧国名の安芸国(あきのくに)と備後国(びんごのくに)を指し現在の広島県に当たる。 そのなかで司馬さんは毛利元就を生んだ高田郡吉田町(現在安芸高田市)へ向かうのだが、近…

「雑草という草はない」と「土用芽(どようめ)」

植物学者・牧野富太郎博士をモデルにしたNHK朝ドラ「らんまん」は結婚、第一子出産、植物図鑑の発行と物語は佳境に入っている。 牧野博士は「世の中に雑草という草はなくそのひとつひとつに名前がある」と何かの機会に語られたことが広まっているが、昭和天…

混迷の世紀・台頭する"第3極"インドの衝撃を追う

NHK製作のドキュメンタリー番組・NHKスペシャルは見応えのあるものが多いが、2022年から始まった今世紀の世界をテーマにした「混迷の世紀」シリーズもそのひとつで、今回は第10回目としてインドを取りあげ「台頭する"第3極"インドの衝撃を追う」と題…

「語り継ぐこの国のかたち」②

7月21日の続き この本の内容で「なぜ無謀とも言える太平洋戦争に突き進んだか」に繋がる部分での二番目の内容。 ②昭和の誤りの遠因は日露戦争にある。 日露戦争の勝ちというのは(海軍の日本海海戦は完全勝利だが)陸戦の勝敗では本当の勝ちではない。あ…

『東アジアからみた「大化の改新」』

仁藤敦史著『東アジアからみた「大化の改新」』吉川弘文館 刊(歴史文化ライブラリー555)を読み終えた。著者は日本史の専門家で特に古代史について色々な著作がある。 よく知られているよう「大化の改新」とは飛鳥時代皇極天皇4年(645)中大兄皇子、中…

故郷の美祢(みね)線の豪雨被害/頑張れ美祢線

山口県在住の中学同級生から故郷のシンボルのひとつでもあるJR美祢線の、梅雨の大雨被害の写真を送って貰った。6月30日からの豪雨で現在全線不通、復旧の目処が立っていない。 美祢線は私の故郷のJR山陽線・厚狭駅から日本海側のJR山陰線・長門市駅を結ん…

「語り継ぐこの国のかたち」①

半藤一利著「語り継ぐこの国のかたち」大和書房 刊を読み終えた。 半藤さんは「文藝春秋」の編集長を勤めたジャーナリスト出身だが、むしろ昭和史研究家や「ノモンハンの夏」「日本のいちばん長い日」などのノンフィクション作家としての顔が著名かも知れな…

「戦国武将 三澤氏物語」③たたら製鉄

たたら製鉄は砂鉄と木炭を原料にして粘土製の炉のなかで高温燃焼させ鉄を取り出すもので、古墳時代には大陸から日本に伝来していたといわれ、近代初期までは盛んに行われていた。たたらとは炉に空気を強制的に送り込む大型の「ふいご」のことである。 ジブリ…

「新街道をゆく―奈良散歩―」

「街道をゆく」は作家・司馬遼太郎さんの代表作で全43巻の大作である。NHKではこれを1990年代に一度TV化して放送したことがある。 今回、令和版として「新街道をゆく」と名付けて放送を始め、第一回が「鎌倉殿の十三人」のこともあり関東武者のふるさ…

「海軍戦争検討会議記録・太平洋戦争開戦の経緯」②

7月16日の続き この本のあとがきを書いた海軍史研究家・戸髙一成氏が「決定的資料!」という通り海軍からみた太平洋戦争の裏面がかなり表に出てくる重たい資料だが、私なりに重要なポイントを抽出してみる。 ①海軍の主流は日・独・伊三国同盟や日米開戦に…

兵庫県立美術館・金山平三(かなやまへいぞう)展

昨日は神戸市中央区にある兵庫県立美術館へ行って来た。施設の入居者の方のご友人・書道家の方に入場券を頂き折角の機会を生かそうと思った次第である。 当日は洋画家・金山平三の特別展「出会いと、旅と、人生と、ある画家の肖像・日本近代洋画の巨匠金山平…

「海軍戦争検討会議記録・太平洋戦争開戦の経緯」①

新名丈夫(しんみょうたけお)編「海軍戦争検討会議記録・太平洋戦争開戦の経緯」角川新書 を読み終えた。 先日垂水の街に出掛けた際NHK・Eテレ「NHK俳句」のテキストを買いに書店に寄ったところたまたま目について衝動的に買ってしまった。 一度蔵書を処分し…

下関攘夷戦争と「陥穽(かんせい)」

孝明天皇の強い意向を受け徳川幕府十四代将軍・家茂は外国船を打ち払う攘夷実行期日を文久3年(1863)5月10日と奉答、布告した。 当時これを実行出来るとは誰も思ってないなか、唯一長州藩では当日関門海峡を通過する外国船を砲撃、下関攘夷戦争の始ま…

昼食会

昨日は施設の俳句サークルに入っている男性メンバー三人で垂水駅前で昼食会に出掛けてきた。 和食中心の店で三人とも刺身定食と生ビールを頼んだ。以前一度来たことがあり、その時も同じものを頼んだ記憶があるが、魚が自慢の店ということであり今回も同じも…

大阪・南御堂(みなみみどう)

昨日は近くに用事があり、大阪のメインストリート・御堂筋の名前の由来になった南御堂に寄ってきた。正式名称は真宗大谷派難波別院で、名前の通り東本願寺の別院で地下鉄本町駅からすぐの至便な位置にある。 親鸞が創始した浄土真宗の歴史は古く一向宗とも呼…

戦国武将 三澤氏物語②三澤氏の誕生

7月7日の続き 三澤氏の出自は信濃国(しなののくに・長野県)で、木曽義仲をルーツとする説もあるらしいが、現在では同国伊那谷(いなだに)に居住していた清和源氏を祖とする飯島氏とされている。 承久(じょうきゅう)3年(1221)後鳥羽上皇と鎌倉幕府・北…

映画「遠い空の向こうに」

NHKBSプレミアムシネマで放送、録画していた1999年製作のアメリカ映画「遠い空の向こうに」をようやく観終えた。 観終わって、この映画は自分の記憶に残り続ける一本になると予感めいた気がしてきた。 観ている間不覚にも涙が2~3度出てしまったがこれ…

「この世を生き切る醍醐味」

樹木希林「この世を生き切る醍醐味」朝日新聞出版刊 を読み終えた。 この本は女優・樹木希林さんがガンで亡くなられる半年前、3日間7時間に及ぶ朝日新聞論説委員が聞き手のインタビューを取りまとめたもので巻末に一人娘の内田也哉子さんの葬儀後のタイミ…

「足利尊氏」

森 茂暁(もり しげあき)著「足利尊氏」角川選書 を読み終えた。 足利尊氏は毀誉褒貶の激しい典型的な人物である。鎌倉幕府を倒した最大の功労者で室町幕府の創始者でもある。 しかし後醍醐天皇に呼応して鎌倉幕府を滅ぼした後、後醍醐天皇と袂を別ち北朝を立…

「道づれは好奇心」

澤地久枝著「道づれは好奇心」講談社 刊を読み終えた。先日このブログに書いたNHKのドキュメンタリー番組「ミッドウエー海戦 3418人の命を悼む」以来知らず知らずのうちに澤地久枝、安野光雅コンビに私自身に縁が出来たらしく偶然手に取ったこの本の装幀…

戦国武将 三澤氏物語①

私のふるさと厚狭は関ヶ原合戦後、江戸時代を通じて厚狭毛利家の給領地であったが、厚狭毛利家が入部する前すなわち毛利氏が中国地方八ヶ国の太守であった時代、一時的に三澤為虎(みさわためとら・三沢摂津)が領していた。 天正17年(1589)毛利輝元は秀…

家康の長男・信康誅殺事件

苦難の末に天下統一を果たした徳川家康の生涯を振り返った場合なんと行っても第一の痛恨事は長男で跡継ぎの信康を妻の築山殿と共に死に追いやったことにあると想像される。 NHK大河ドラマ「どうする家康」ではちょうどこの頃を描いているが、小説的発想でか…

7月句会

昨日は施設の俳句サークルの7月例会で12人の出席であった。一名の方が死亡退会、一名が中断、一名が欠席(出句のみ)。 私は兼題の「噴水」一句を含め、毎日このブログに書いて来たものの中から一部手直しを加え次の5句を出した。 ①乳歯抜け笑う子供の夏帽…

「恋・酒・放浪の山頭火」

石寒太(いしかんた)著「恋・酒・放浪の山頭火」徳間書店 刊を読み終えた。 よく知られているように山頭火は山口県出身の俳人で俳句の初心者である私にとっては同郷の大先輩であり以前にも関連する本でこのブログに書いたことがある。 山頭火の酒と放浪につい…

「山名宗全と細川勝元」

小川信(おがわまこと)著「山名宗全と細川勝元」吉川弘文館刊を読み終えた。 この二人の人名を聞いてピンとこなくても「応仁の乱」の対立した東西両軍の総大将と言えば歴史の教科書には必ず出てくるので思い出す人もいるはずである。 この本はその総大将二人…

長い槍の話

古来武将が戦いに勝つことを目指す場合色々なアプローチの仕方があることを歴史が教えているが、兵に持たせる武器をより効果的なものに変えていくのもそのひとつである。 映画「アレキサンダー大王」を観たのでこの際塩野七生さんのアレクサンドロスを読み直…