読書の勧め

中断中のひとりごと「流転の子/最後の皇女・愛新覚羅嫮生(あいしんかくらこせい)」

本岡典子著「流転の子/最後の皇女・愛新覚羅嫮生」中央公論新社刊を読み終えた。 というのも最近、中国清朝の皇帝一族の姓・愛新覚羅(あいしんかくら・アイシンギョロ)に関係するのではと思える日本の姓に出会い、もう一度関連する本を読まねばと思い探し出…

「太平記の世界・列島の内乱史」応永の乱/ブログ中断のお知らせ

佐藤和彦著「太平記の世界・列島の内乱史」吉川弘文館刊を読み終えた。 この本は14世紀の30年代から鎌倉幕府の終焉と共に約60年間にわたって日本列島を広範囲に戦乱に巻き込んだ南北朝時代を、室町時代に成立した軍記・太平記を共通の手がかりにして描…

「北京の歴史」③エピソード②

1月13日の続き、「北京の歴史」に書かれているエピソードの内の残りの2項目。 ③盧溝橋(ろこうきょう) 盧溝橋は北京の西南郊外の永定河(えいていが)にかかる橋で11基のアーチ型孔洞をもつ橋脚で支えている有名な橋である。 永定河の旧名が盧溝河であり…

「退いて後の見事な人生」新井白石(あらいはくせき)

童門冬二(どうもんふゆじ)著「退いて後の見事な人生」祥伝社刊 を読み終えた。著者は東京都庁に勤めた後歴史作家に転身した人物で、TVの歴史番組などのコメンテーターとして見かけることがある。 著者は、自分も含めた現代の「隠居力」を起承転結ではなく起…

「北京の歴史」②エピソード①

1月11日の続き 「北京の歴史」に織り込まれているエピソードの中で日本人に比較的馴染みがあると思われるものを2回に分けて書いておきたい。 ①「隗(かい)より始めよ」 古代、北京の辺りは燕(えん)国と呼ばれていたことは既に書いたが、燕は当時の辺境に…

「北京(ぺきん)の歴史」①

新宮 学(あらみやまなぶ)著「北京の歴史」筑摩書房 刊を読み終えた。著者は中国近世、中国都城史、東アジア比較都城史の専門家で副題が「中華世界に選ばれた都城の歩み」となっているように、北京の起源から中華人民共和国の首都となるまでの歴史を丹念にた…

「新街道をゆく②肥薩の道」

作家・司馬遼太郎さんの全43巻に及ぶ代表作「街道をゆく」を、司馬さんの生誕100年を期してNHKが映像化する「新街道をゆく」、今回はその五回目の放送で「肥薩のみち」である。 肥とは肥後国・熊本県、薩とは薩摩国・鹿児島県であり、司馬さんが昭和4…

塩野七生(しおのななみ)さんの徳川慶喜への評価

イタリア在住の作家・塩野七生さんが月刊誌「文藝春秋」に「日本人へ」と題したエッセイを連載されていることは以前にも書いたことがある。 最新の新年号では前号に引き続いて『「燃えよ剣」を読む』と題して作家・司馬遼太郎さんの新選組副長・土方歳三を主…

「物語 朝鮮王朝の滅亡」

金 重明(KimJungMyeong)著 「物語 朝鮮王朝の滅亡」岩波書店 刊 を読み終えた。 著者は在日二世の小説家で本の題名に「物語」と付いているように、史料に基づいて歴史的事実を考証するのではなく「朝鮮王朝の滅亡」という重苦しい事実を平易に…

「史書を読む」

坂本太郎著「史書を読む」吉川弘文館 刊を読み終えた。 著者は1987年に亡くなられたが、日本の古代制度史の基礎を作ったひとりとして評価され文化勲章も受賞されており、この本は1981年に刊行されたものの復刊本である。 この本は、古事記、日本書紀…

「歴史に裏切られた武士 平清盛」

上杉和彦著「歴史に裏切られた武士 平清盛」アスキー新書刊 を読み終えた。 この本は標題に表されているが、一般的に驕る独裁者として悪人のイメージが定着している平清盛について、最近の研究成果を踏まえながら清盛の実像に迫ろうとするもので、著者は日本…

「大佛勧進(だいぶつかんじん)ものがたり」

平岡定海(ひらおかじょうかい)著「大佛勧進ものがたり」吉川弘文館 刊 を読み終えた。 著者は東大寺の最高職である別当(べっとう)も勤めた僧侶でもあり、史学の専門家である。 勧進(かんじん)とは寺社・仏像の建立(こんりゅう)や修繕などのため寄付を募るこ…

映画「土を喰らう十二ヵ月」

施設の映画会で2022年の日本映画「土を喰らう十二ヵ月」の知らせがあり参加してきた。 ネタバレにならない範囲で簡単に書くと、物語は初老に差し掛かった作家(沢田研二)が信州の山裾で、時折訪れる年下の恋人で編集者(松たか子)や、愛犬と暮らし、村人や…

「戦乱と民衆」

磯田道史/倉本一宏/F・クレインス/呉座勇一共著「戦乱と民衆」講談社現代新書刊を読み終えた。 著者は何れも国際日本文化研究センターに所属する日本史関係の教授、准教授で、この本の後半を構成する一般にも公開されたこのテーマに関係するシンポジウム「日…

高砂と工楽(くらく)松右衛門

兵庫県高砂は結婚式の定番・謡曲「高砂」の舞台であり瀬戸内海運と播磨の大河・加古川の舟運で発達してきた湊街で西方に姫路を控える。 中学時代の同級生のひとりが此処に住み、以前播磨繋がりで会った際に、高砂の歴史観光パンフレットなどを頂いており高砂…

「オスマン帝国英傑列伝」

小笠原弘幸著「オスマン帝国英傑列伝」幻冬舎新書刊を読み終えた。 オスマン(トルコ)帝国は13世紀末に産声をあげて領土を拡大、数世紀のうちにイスラム世界の覇者となり、16世紀には世界で最も強大な国家となるが、18世紀末よりヨーロッパ列強の圧迫を…

「幕府」とは何か・武家政権の正当性

東島誠(ひがしじままこと)著『「幕府」とは何か・武家政権の正当性』NHK出版 刊を読み終えた。 然しこの本を読み終えるのにはここ数年例が無いほど難儀した。2~3度途中で止めようかと思ったがヘトヘトでたどり着いた気がしている。 その訳は、あらゆる箇…

映画「かもめ食堂」

NHKBSで放映された2006年の日本映画「かもめ食堂」を録画して見終わった。実に不思議な感覚に陥る映画で、時間がゆったりと過ぎて行き、見終わると日常の雑事などどうでもよくなるような錯覚が起き、精神衛生上実に効果があるような気がする。 これと全…

「武士の衣服から歴史を読む/古代・中世の武家服制」

佐多芳彦著「武士の衣服から歴史を読む/古代・中世の武家服制」吉川弘文館を読み終えた。著者は歴史学の教授で貴族社会の服装研究の延長で興味が武士に広がりその風俗研究のなかから衣服に絞ってたどり着いたのが本書ということである。 通常現代の本は右開…

「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」

大木 毅著「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」岩波新書刊を読み終えた。著者とは初めての出会いで、専門はドイツ現代史、国際政治史とのことである。 この本の末尾「おわりに」に著者は「新書でスタンダードな独ソ戦通史を書くという大きな課題が、はたして達成された…

司馬遼太郎さんの随筆⑦播州の国

司馬遼太郎全集に収録されている随筆のなかに、昭和41年の「日本読書新聞」に掲載されたという「播州の国」という短いエッセイが収録されている。 よく知られているように司馬さんの家は数代前まで播磨国(はりまのくに・兵庫県)に住んで居られたそうで、記…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など②大村神社

記念大会聴講の前日、中学同級生の案内で長州藩の明治維新立役者のひとり大村益次郎の生地に、本人を祀って建つ大村神社に連れて行って貰った。 少しおさらいをすると大村益次郎は周防国(すおうのくに)鋳銭司(すぜんじ)村(現山口市)の村医者の子として生まれ…

「女性差別はどう作られてきたか」

政治学者・中村敏子著「女性差別はどう作られてきたか」集英社新書 刊を読み終えた。 私にとってこのようなジャンルの本を手に取るのは全く初めての試みなのだが、次回の放談会のテーマが「ジェンダー」であり、一度くらいは関連する本に目を通しておかねば…

芭蕉「旅に病で」

先日大阪・御堂筋にある南御堂に用事があり、境内庭園の芭蕉の句碑を紹介した。芭蕉は元禄7年(1694)生地・伊賀上野から奈良を経て大阪に着き体調を悪くする。 門人達の手で病床を当時南御堂前にあった出入りの花屋の静かな座敷へ移しそこで臨終を迎えた…

「古代史の基礎知識」と「古墳」/ 厚狭の前方後円墳

吉村武彦編「新版 古代史の基礎知識」角川選書と土生田純之(はぶたよしゆき)著「古墳」吉川弘文館 刊を読み終えた。といっても「古代史の基礎知識」の方は古墳の部分に限定して読んだのだが。 元々歴史好きながら古代史は余り興味がなく、中世以降をもっぱら…

「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗」②

11月14日の続き 太平洋戦争に至る道程のなかで日本が世界から「どちらを選ぶか」と問われた3回の重要分岐点について、なぜ日本はより良き道を選べなかったのかを史料を読み込み考えるのがこの本(若者への講義録)の著者の狙いである。 私は何度もこの道…

「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗」①

加藤陽子著「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗」朝日出版社刊を読み終えた。 実はこの本を借り出すきっかけは図書館の本棚で著者名を見たからで、2017年菅内閣の折、日本学術会議のメンバー選定に際し会議からの推薦者の内、6名の任命拒否者のひ…

「織田家臣団の謎」

菊地浩之著「織田家臣団の謎」角川選書 を読み終えた。著者は別に「徳川家臣団の謎」という本も出されているらしいが、専門は企業集団や系列の研究など経済学にあるらしい。 そのためこの本の中には従来の定説とは違った見解をされている箇所がかなりあり、…

塩野七生・「点と線」を読む

いうまでもなく塩野七生さんはイタリア在住の作家で、大作・「ローマ人の物語」など西洋史に題材を得た歴史エッセイなどで本年度文化勲章を受賞され、また私を西洋史の世界へ導いてくれた人でもある。 「点と線」はこれも殊更いうまでもなく作家・松本清張さ…

動物言語学の幕開け・四十雀(しじゅうから)がしゃべる

文藝春秋11月号の巻頭随筆に動物学者で東大准教授の鈴木俊貴(すずきとしたか)さんが「動物言語学の幕開け」という題でエッセイを書かれている。 この名前と動物言語という言葉で直ぐに思い浮かべたのが、私のこのブログに2022年5月10日「四十雀がし…