「女性差別はどう作られてきたか」

政治学者・中村敏子著「女性差別はどう作られてきたか」集英社新書 刊を読み終えた。

私にとってこのようなジャンルの本を手に取るのは全く初めての試みなのだが、次回の放談会のテーマが「ジェンダー」であり、一度くらいは関連する本に目を通しておかねばという気持ちもあった。

この本は題名の通り西洋世界や日本で女性差別が形作られる経緯を追いかけ日本の女性差別をどう克服するかまでを語っている。

この本を読んで一番驚いたことは西欧世界の基本的な理念であるキリスト教が歴史的にみた場合の女性差別の根源にあるということであった。

少し長くなるが、私なりにこの本の論点を要約すると以下の通りである。

旧約聖書エデンの園でのアダムとイブの原罪行為が女性は男性の支配下にいるべき者などとされる解釈の源にある。

近代社会成立のきっかけである宗教改革や政治革命は、男性は自由で平等な「個人」となる一方で女性は家族の中に取り残され、そこで男性による女性に対する支配が確立する。

この生物的属性による差別が徐々に解消されていくのは1970年代以降の各種のフェミニズム運動、神ではなく人間がすべての秩序を作ることを目指す運動に依らなければならなかった。

日本の江戸時代には儒教の教えである「夫婦別あり」ではなく「夫婦相和し」であった。女性は結婚後も自分の姓を保持し「家」に於ける「当主」に対し「女房」として家政を担当し家のマネージャーの役割を果たしていた。こういったことからも江戸時代の日本の女性は同時代のイングランド(西欧)の女性より解放されていた。

明治維新後、民法普通選挙法などを通じ女性に対する社会的差別が助長されたのは、家の原理である地位にもとづく権限という考え方が駆逐された、西洋からきた「男性」が「生物的属性」により権力を持つという思想が導入されたからである。

世界経済フォーラムが出している「ジェンダー・ギャップ指数」は経済・政治・教育・保健の4つの分野の男女の平等を指数化しどれだけ男女の平等化が進んでいるかを世界諸国のなかで位置付ける。

2020年は日本の総合順位は153ヶ国中121位であった。教育や保健はほぼ平等が達成出来ているのに対し経済(115位)政治(144位)の分野での不平等が著しい。

西欧やアメリカでは社会の基本構造に女性差別が組み込まれ「ガラスの天井」という言葉で表現される。

日本では近代化を目指すなかで、男性だけが社会に進出して大きな家という構造が作られ性別分業が拡大、社会的な決定権を男性が握る「家父長制」が作られた。日本に存在するのは「ガラスの天井」ではなく、家族と社会を隔てる「土の壁」とも云えるものである。

🔘今日の一句

 

大根畑(だいこばた)豊作の穴並びおり

 

🔘施設介護棟の屋上庭園、ローズマリー