原 武史著『「昭和天皇実録」を読む』岩波新書 を読み終えた。
著者は元日本経済新聞の社会部記者で昭和天皇の最晩年を取材、後に日本政治思想史の専門家となる。
昭和天皇実録は云うまでもなく宮内庁が編纂した昭和天皇の伝記で、2014年に24年の歳月をかけて完成したとされ全61冊一万二千ページ以上に及ぶ大部で昭和史の貴重な基礎資料といわれる。
幼少期から戦後の象徴天皇制の定着期まで個人的な動向なども含めて内容が論じられているが、対象が大部のものを新書に集約しているためどうしても通りいっぺんの内容紹介になってしまっているきらいがある。
私が興味を持ったのは以下の箇所で、
1928年2月22日の記述から、
天皇は普通選挙によって無産政党がどれだけ進出するかに関心があった。政友会や民政党のような有産者のための政党でなく社会民衆党や日本労農党など無産者のための政党が躍進することは、むしろ天皇にとって望ましいと考えていた。
1929年3月16日の記述から、
総理大臣・田中義一から小選挙区制法案をめぐる、議会情勢等につき奏上を受けられ、この制度が無産政党のような党派の代表が当選を阻まれ、彼らをして直接の行動をとり危険なことになるのではないかと下問された。
★天皇の考えは無産階級といえども臣民であり、むしろ議会に進出させて彼らの声を合法的に反映させておく方が体制は安定すると考えていた。天皇は革命につながるような直接的な行動こそを恐れていた。
著者はこの背景に当時頻発していた天皇への直訴があるのではないかとしている。
🔘天皇が当時の為政者よりはるかにリベラルな考えであったことが良く理解できた。この考え方が軍などの反対を押さえ終戦を決断されることにつながっていると想像する。
🔘今日の一句
紅葉踏み相撲部員が疾走す
🔘近所の施設の庭、画像検索では初めて出逢うカッシア(アンデスノオトメ)という名前なのだが。