「酔鯨(すいげい) 山内容堂(やまうちようどう)の軌跡 」

家近 良樹(いえちかよしき)著「酔鯨 山内容堂の軌跡」講談社現代新書 刊をようやく読み終えた。
500ページを超える大著で、休憩や用事を挟んだこともあり読み終えるまで5日間かかってしまった。
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もう12月も半ばに近づいているのでほぼ間違いないと思うが、自分自身にとって今年読んだ本のなかで最も有益になった本だと思える。

著者は幕末を中心にした日本近代史の専門家で2~3度NHKの歴史番組で見かけたことがある。
この本の研究対象は第15代土佐藩主の山内豊信(とよしげ)で退隠後、容堂と号した。
幕末維新にかけて土佐藩を率い、幕末に於ける諸大名のなかで英明と言われる一人で藩政を改革すると共に中央政治にも参画し名を成した。

容堂は山内家が外様ながら徳川氏から土佐一国を与えられた特別な家だと言う自覚があり、自身の考えが体制一新にありながら薩長両藩のような急進的な倒幕に与せず幕府と朝廷を融和させることに執着し、大政奉還の建白に実を結ぶが、以後その立ち位置がわざわいし中央政治から遠ざけられる。

坂本龍馬もメンバーの一人で、藩内の下士達を中心に結成された土佐勤王党を弾圧し、盟主・武市半平太などを死に追いやった事には今でも批判がある。

容堂の酒好きは有名で表題の一部「酔鯨」もこの由来だが、この為しばしば健康にも不安が生じており著者はこの本の「はじめに」でこう書いている。

『もし容堂が健康に恵まれ、かつ粘り強く物事に取り組む真摯な姿勢を一貫して保持しえたなら、幕末維新史は、われわれの知るそれとは大きく異なるものとなった可能性がある。』とした前置きで
・冷静に天皇のありようを眺められた容堂なら天皇機関説象徴天皇制に近い考えを提案しえた。
・早い段階で対外交易の収益に注目した容堂なら強兵より富国に重点を置く国家建設を模索した可能性がある。

私は長州・山口県に生まれたので維新史には殊更興味があり、なぜ[薩・長・土・肥]なのかをずっと考えているが、この中の土佐を考える上で、この本は土佐の維新史にもなっているところから大きな参考になった。

尚表題の酔鯨のことなどは別途書くことにした。

◎形がアジサイに似ているようなあまり見かけない花
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