「語り継ぐこの国のかたち」①

半藤一利著「語り継ぐこの国のかたち」大和書房 刊を読み終えた。

半藤さんは「文藝春秋」の編集長を勤めたジャーナリスト出身だが、むしろ昭和史研究家や「ノモンハンの夏」「日本のいちばん長い日」などのノンフィクション作家としての顔が著名かも知れない。

作家・司馬遼太郎さんとの親交も長く、この題名も司馬さんの有名な随筆集「この国のかたち」を意識したものであることは間違いなく、後で書くように両者が共通して戦前の日本に於ける国家統制の問題点としてあげる「統帥権(とうすいけん)」なども取りあげられている。

半藤さんは2021年1月に90歳で亡くなられているがこの本は2021年10月に出版されており時期的にもまた「あとがき」の「日本よ、平和で、いつまでも穏やかであれ」という言葉からもからも「遺言」のような本であるのかも知れない。

明治以降の歴史やエピソードも含め昭和の戦争の時代に至る歴史を振り返る内容のなかで、私自身が知りたいと思っている「なぜ無謀とも言える太平洋戦争に突き進んだか」に繋がる部分で自分自身が納得出来る二つの内容を抽出させてもらうことにした。

統帥権

西南戦争の際、軍を動かす際に一々政府の指示を仰ぐ事の弊害が明らかとなり戦争終結後明治12年に、軍を天皇直率にして、陸海軍参謀長に政府を経ず天皇から直接命令が下される形にした。

明治22年の憲法発布により、政治面での天皇から総理大臣他各大臣、軍隊統帥面の大元帥陛下(天皇)から陸軍・参謀総長、海軍軍令部総長という二元ルートが出来上がり、国家の政策と軍の作戦計画が合わない場合はどうするかという問題が積み残され、これがこの後の政治に拘束されない軍部の暴走を引き起こすことになる。例えば

・昭和3年(1928)満州軍閥張作霖爆殺事件

・昭和6年(1931)柳条湖事件を発端とする満州事変と満州国建国

・昭和12年(1937)盧溝橋事件を発端に泥沼の日中戦争に拡大

何れも政治に関係なく陸軍の勝手な謀略により引き起こされ政治がこれに引きずられ振り回される。

字数が尽きたので残りの一項目は次回に書きます。

🔘一日一句、同級生からふるさと厚狭の象徴のひとつ美祢線の大雨被害の写真が送られて来た。復旧が心配。

 

故郷の鉄路壊して梅雨去りぬ

 

🔘施設の庭、ニチニチソウ