平川 新(ひらかわあらた)著「戦国日本と大航海時代」中公新書 刊を読み終えた。
これを図書館で借り出すきっかけは、3月にNHKスペシャル2回連続で「戦国~激動の世界と日本」と題した番組が放送されそれぞれの副題が「秘められた征服計画」「ジャパン・シルバーを獲得せよ」で当時の日本を世界史の視点で見直そうという狙いであり、同様の思考を踏まえた歴史家の本を探して出会ったものである。
番組の要点は以下のようなものだった。
・ヨーロッパ列強が世界に乗り出していた大航海時代と日本の戦国時代は重なっていて国内の動きは世界各国の影響を大きく受けている。
・特にカトリックのスペインやポルトガルは軍事力またはキリスト教の布教を通じて日本や中国・明更にはアジアを支配しようとしていた。
・信長、秀吉、家康はこれを知りつつ利用し天下統一を進めるが、同時にこの危険性を排除するための色々な政策を発動する。
・これらを考えるうえで重要なキーになるのが、経済面での銀の産出と、軍事面での鉄砲生産である。
この本も番組の前記の大きな視点を共有したうえで、国内外の史料を読み込み種々の独自の見解が述べられているが、そのなかで最も面白いと感じた秀吉の朝鮮出兵に関する見方を書き残しておきたい。
朝鮮出兵のことをおさらいすると、乱世を統一した豊臣秀吉が二度(文禄・慶長の役1592~98)、それぞれ15万人を超える軍兵を動員して朝鮮に出兵した国際戦争で、日本軍は一時朝鮮北部まで進出したものの宗主国・明が援軍を派遣したため講和交渉に入ったが決裂、再度出兵したが秀吉の死去で撤退する。
朝鮮出兵に関しての見方概略は以下の通り、
・フランシスコ・ザビエルが来日して約40年で日本のキリシタン人口は20~30万人に膨れ上がりこの勢いをみたスペインポルトガルをバックにしたカトリック・イエズス会はキリシタン大名を支援して日本をキリスト教国に改造したり、明国を征服する計画を立てている。
・この野望を知った秀吉は彼らが明国を支配する前に自分が先に明国を支配するという強い意思を持ちその手始めとして朝鮮に出兵した。
・朝鮮出兵による軍事行動はスペイン勢力に恐怖心を与え日本を武力で征服することを断念、アジアヨーロッパで日本は一挙に知名度を挙げ軍事大国という評価が確立し、後継の徳川政権にも引き継がれて行く。
・秀吉のアジア外交、明国征服の始原は信長にあり信長の構想はイエズス会宣教師との対話や関係にさかのぼる。
🔘NHKの番組と併せ戦国時代に関する見方の間口が拡がった気がしている。
🔘今日の句
夕燕地を這う虫も咥へけり
夕燕飛翔自在に虫を狩り
🔘施設介護棟の黄色のモッコウバラ(木香薔薇)