「戦国武将 三澤氏物語」③たたら製鉄

たたら製鉄は砂鉄と木炭を原料にして粘土製の炉のなかで高温燃焼させ鉄を取り出すもので、古墳時代には大陸から日本に伝来していたといわれ、近代初期までは盛んに行われていた。たたらとは炉に空気を強制的に送り込む大型の「ふいご」のことである。

ジブリのアニメ「もののけ姫」ではこのたたら製鉄が背景になっていた。たたら製鉄は大量の木炭を必要とするためどうしても樹木の伐採自然破壊という問題と向き合うことになる。

今では近代製鉄によってたたら製鉄は姿を消したが唯一日本刀に用いる玉鋼を生産する「たたら場」が島根県に残っており以前NHKでその製鉄過程が放送され興味をもって観た記憶がある。

三澤氏が拠点を置いた三沢城のある一帯・奥出雲、仁多郡は砂鉄の産地であると共に中国山地の木炭も得られる地であることから、三澤氏は一族を近郷各地に配して原料の確保を行い、安定した鉄の生産で力を付けたと言われる。

また三沢には山を越えた備前(岡山)から鍛治職人一派が来住し、刀だけでなく鎌、鍬などの農具も盛んに作り開拓を進め農地を拡げることが容易になった。

領内で生産した鉄は当時日本海航路の重要港であった日御碕(ひのみさき)・宇竜(うりゅう)港へ運びここから京都方面に送られたと言われる。三沢から宇竜までは陸路長距離になるため途中の大原郡・新宮庄を手に入れ鉄輸送の中継地にした。

明徳元年(1392)山名氏が幕府に対して起こした「明徳の乱」や戦国時代の幕開けといわれる応仁元年(1467)「応仁の乱」では三澤氏は京に上洛して戦った記録が残り、1470年代頃には鉄と農地の拡充を背景に三澤氏一族は出雲国の国人(こくじん・在地領主層)衆の中心にあったと考えられている。

🔘一日一句

 

抱き合いて母子が眠る夏電車

 

🔘施設の庭の木蔭、ユリ科カサブランカと思われる。