寺島実郎さんと悪人正機説(あくにんしょうきせつ)

寺島実郎さんと言えば日本総合研究所というシンクタンクの会長で大学教授を始め各種の公職を歴任されている政治、経済、国際関係にまたがる論客である。

私は日曜朝の報道番組「サンデーモーニング」は必ず録画して夜に観ることを習慣にしているが、そこに不定期で出られている寺島さんの他の人にない視点からの指摘、提言にいつも聞き耳を立てている。

垂水図書館へ行った際たまたま目に留まった寺島さんの書かれた「世界を知る力  日本創生編」という本をめくると普段主張されている内容とは余り縁のない浄土真宗の開祖・親鸞に関する記述があり、その箇所に牽かれて借り出してきた。

私は今に至るまで無信心無宗教で通してきたが、母親が熱心な真宗門徒でもあり浄土真宗については歴史上の一向一揆のことも含め興味がある。

特に親鸞の弟子・唯円(ゆいえん)が親鸞の死後親鸞の教えをまとめたとされる「歎異抄(たんにしょう)」のなかにある一般に「悪人正機説」と呼ばれる

善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや

の記述の解釈については以前からとても興味がある。現代風に読むと悪の勧めのように聞こえるが決してそうではなく様々な解釈がされてきた。

寺島さんは東本願寺で講演したこともあり前々から親鸞に関心があったらしいが、この悪人正機説について以下のように書かれている。

東日本大震災の際ちょうど新幹線に乗り合わせ帰宅困難者の人々が(肩書きや社会的な虚飾に関係なく)万人に等しく配給されるパンや水をきちんと並んで受け取っている姿を見て思った。

極限状態のなかでは、人間、絶対平等になるのだ』

『近代合理主義的な発想で生きてきた人間にとって、往生に善人も悪人もないとする悪人正機説は、きわめて理解しがたい、納得のいかない言葉ではある。しかし、大震災によって生じた人間関係のフラット化を目の当たりにして、究極のところで善も悪もなく、専心念仏だという親鸞の考えが、素直に心にしみこんできたのだった。』

🔘宗教とは無縁と思えるような分野の専門家が宗教にも関心を向けていることには考えさせられる面がある。

悪人正機説についての解釈はこれだけではないことは明らかではあるが、ひとつの見方として参考になった。

 

青梅雨に赤のひと葉が意地を立て】

 

🔘健康公園の李(スモモ)が食べ頃の実を付けてきた。以前公園の管理者の方に手の届く範囲なら採ってもいいといわれていたので少しばかり採って食べてみた。少し甘い独特な味がする。なぜかスモモは故郷の村には無かった気がするのだが。