「史書を読む」

坂本太郎著「史書を読む」吉川弘文館 刊を読み終えた。

著者は1987年に亡くなられたが、日本の古代制度史の基礎を作ったひとりとして評価され文化勲章も受賞されており、この本は1981年に刊行されたものの復刊本である。

この本は、古事記日本書紀風土記など古代の歴史書から中世の平家物語吾妻鏡(あずまかがみ)、太平記、など、近世の大日本史、近代の日本開化少史に至るまで全部で29の史書を取り上げ、その史料としての価値、性格や編著者の姿勢などを著者の一貫した視点で論じたものである。

著者は「あとがき」のなかで、真っ先に「史書を読むことは楽しい」と書き、更に「偉大な史書は読む人の立場によって、いかようにも変わった姿を現す。読むたびに新しい発見があって、あるいは驚き、あるいは笑う。ここでは私のそうした経験の一端を記して、各々史書の性格や面白さを披露したものである。」と書いている。

29の史書は私がよく知っているものから全く初めて聞くものまで様々で、全てについて書く訳にもいかず、著者の説明のなかで私も共感し知識になったものの中から三つを選んでそのキーポイントを以下に書いておきたい。

平家物語ーーこの書の作者はあらかじめ平清盛は残暴、平重盛は仁孝、源氏は勇健、平氏は懦弱と云うように仮定しこれに合うものは力を込めて表現し、合わないものは削ったり捏造したりしている。

吾妻鏡ーー記事の矛盾や誤りも数多いがこのような欠点にもかかわらず、鎌倉幕府の創立以降幕府政治動向、朝廷との関係、社寺の状態などを示すものは本書以外にない。特に朝廷との関係を如何に、武家のあるべき姿は如何に、といった点について後世の武家にとって指針になり特に徳川家康はこの書に傾倒していた。

太平記ーーこの書は主に南北朝時代といわれる約50年間が対象で、全国を舞台にした雄大な軍記物語だが、歴史性の高い物語である。「平家物語」を歴史的物語とすれば、「太平記」は物語的歴史といってもよい程の相違がある。

🔘今日の一句

 

老夫婦詩吟朗々風冴ゆる

 

🔘近くの別の施設の庭、花が散ったバラ(薔薇)が実を付けている。恥ずかしながら色々な種類のバラが実を付けることをこの歳になって初めて知った。