明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
旗振り山からの初日の出、何とか雲の切れ目から。
井澤勇治著『「寅さん」と、旅と俳句と山頭火』芙蓉書房出版 刊を読み終えた。
図書館で題名を見て借り出した際は、てっきり著者が、映画「男はつらいよ」の舞台になった地域や場所を山頭火風に巡り歩き、俳句を詠むのだろうと思っていた。
実際は、著者が東京都庁を退職したあと仕事を持ちながら、永年の友人と二人で「区切り打ち」といわれる八十八ヶ所を区切って休日を利用して廻る方法で、五年間かけて四国遍路を結願(けちがん)した記録である。
副題が「弥次喜多へんろ道中記」とあるように六十代二人の初めてのへんろ旅が、身体の不調、お接待や宿舎でのふれあい、季節の移ろい、四国各地の景色や名所などと共に描かれ、読むものが遍路へチャレンジしたくなるような気になってくる。
著者は「男はつらいよ」のファンのようで、道中記の随所に渥美清さんが「風天」の俳号で詠んだ俳句が挿入されたり、「男はつらいよ」の四国での場面描写が出てくる。
また私の郷里出身の漂泊の俳人・種田山頭火は「お遍路」の末にたどり着いた四国松山で往生するが、著者は山頭火の「四国遍路日記」の愛読者らしく、これも道中記の随所に出てくる。
渥美清さんも自身俳句を詠んでいたこともあり山頭火に思い入れがあったようで、その足跡を訪ねられたエピソードがこの本に書かれている。
以前何かに書いてあったが、サラリーマンがリタイアした後のやりたいことアンケートの上位に「四国八十八ヶ所遍路旅」がいつも挙がるらしいが、この本を読むと、「苦しく辛い中に喜びが見出だされる」ようで、なる程と思わせるものがある。
遍路旅は弘法大師・空海と一緒に歩くという意味からよく「同行二人(どうぎょうににん)」といわれるがこの本に書かれたのは、本人、友人、弘法大師、寅さん、山頭火、の「同行五人」のような気がしないでもない。
・この本に取りあげられた沢山の「風天」の句で、個人的に最もいいなと思えた句、
お遍路が一列に行く虹の中
・この本に取りあげられた「遍路日記」で、個人的に最も親近感を覚えた部分、
「おべんとうはとても景色のよいところでいただいた、松の木のかげで、散松葉の上で、石蕗の花の中で、大海を見おろして」
🔘今日の一句
飄々と風を凌いで冬木立
🔘施設のロビーの正月飾り