『「男はつらいよ」を旅する』

渥美清さん主演の「男はつらいよ」は多分劇場やTVを含むと50作全ての作品を観ている。

2020年1月23日のこのブログで「お帰り寅さん」と題した50周年記念映画を大阪天王寺に観に行ったことを書いている。

もとよりこのとき既に渥美清さんは亡くなられておりこの記念映画ではかつての出演部分を使って物語を構成する工夫が成されていた。

川本三郎著『「男はつらいよ」を旅する』新潮選書を読み終わった。著者は色々な分野をまたにかけた評論やエッセイで広く知られ、私がこのブログの表題にも使わせて貰っている「断腸亭日乗」の永井荷風に関する著作もある。

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『元々「男はつらいよ」は旅の映画だと思い自分個人で寅が旅した小さな町に行ってみようと思い立ち月刊誌「旅」で一年間連載、その後も個人的に旅を秘かに楽しんでいたがあるきっかけから雑誌「新潮45」で連載の企画がスタートし出版会が厳しい中贅沢な仕事をさせてもらった』と著者が述べている。

また最後に『70歳を過ぎた独居高齢者にこんな楽しい仕事の機会を与えて下さったことに、心より感謝いたします』と書かれているのが本音が出ていて面白い。

男はつらいよ」50作の中で私が実際に映画のロケした土地に行ったことがあるのは、沖縄、萩、備中高梁、大阪くらいでそれもロケ地そのものでなくその土地に触れたぐらいのものなので、この本の中で日本各地の地方の町や村の風景は映画のなかのシーンと重なりあって故郷を想うような懐かしさを繰り返し感じさせるものがある。

山田監督も北海道から沖縄までよくぞこれだけ寅さんに似合う土地を探されたものだと感心する。

何でも撮影場所探しを得意とする助監督さんが居られたらしく著者は『「男はつらいよ」は消えゆく日本の風景の記録映画でもある』と書かれており、著者が訪ねた先でも随所に映画の時点の風景と変わりつつある現状が出てくる。

それにしてもテキ屋稼業の旅暮らし、失恋の繰り返し、お節介、故郷柴又で待つ妹さくらや家族など、同じパターンの繰り返しのように見える映画が50本も作られたというのは凄いことに違いない。

読み終わって清々しさと懐かしさが残る本である。

 

【暮れ落ちて  夜景とコラボ  虫時雨】

 

🔘公園の唯一の水溜まりの近くのガマ(蒲)、近付けないので少し遠くから。