映像の世紀バタフライエフェクト・巨大事故 夢と安全のジレンマ

今年の正月は、能登半島地震に続いて羽田空港での日航機と海上保安庁機の衝突事故のニュースで始まり、一体今年の日本はどうなるのかと今振り替えって見て、あの時の一瞬背筋が寒くなったことが甦って来る。

羽田空港での事故は続報で、海上保安庁職員に5人の死者が出たものの日航機の乗客乗員の死者はゼロとの知らせがあった。

あの機体が火を吹きながら着陸しその後全焼した一部始終を見せられていただけに、日頃の日航の安全管理の成果と思い、敬意を抱くと共に日本もまだまだ捨てたもんではないと妙に安堵感が拡がった記憶がある。

録画再生して見たNHKの番組、「映像の世紀バタフライエフェクト・巨大事故 夢と安全のジレンマ」は冒頭部分で羽田空港事故の映像が流れる。

続いて「私達は巨大事故の悲劇とどのように向き合い乗り越えようとしてきたのか」「夢と安全の葛藤の記録である」というアナウンスと共に以下の事故の状況、原因、対応策などが示される。

・(1912)巨大客船タイタニック号の氷山衝突沈没~鋼板取り付けのリベットの低温時強度不足、救命ボートの不足。

・(1937)飛行船ヒンデンブルグ号の炎上~静電気の火花が浮体用の水素に引火。

・(1954)世界初ジェット旅客機コメット墜落~気圧の変化による 機体の疲労破壊(設計強度不足)。

・(1977)スペインテネリフェ・ノルテ空港の2機の飛行機の衝突(飛行機史上最悪の事故)~ヒューマンエラー。

・(1986)スペースシャトルチャレンジャー号の爆発~Oリングの低温耐久性不足。

・(1986)チェルノブイリ原発事故~原子炉制御棒の構造欠陥(安全管理システムの欠陥)

・(2011)福島第一原発事故~想定以上の地震津波による冷却電源喪失

表題にある「夢と安全のジレンマ」は我々が永遠に考え続けなければいけない課題であり巨大事故に限らない。

私も経験してきた企業活動の中で、製品開発と安全確保といった身近なところにも同様な課題があり、少なくともヒューマンエラー(人為的な間違いやミス)や不具合は必ず起きるもので、その事を前提にしたフェールセーフ(故障や異常が発生しても安全側に動作させる)やフールプルーフ(間違ったことをしても安全が確保されたり間違った使い方が出来ないようにする)の設計生産思想は極めて重要な安全確保策のひとつである。

🔘番組のなかで特に印象に残った言葉で、福島原発事故後のドイツ原発政策を見直した際のメルケル首相(当時)の演説、

『私は福島原発事故の前には原子力のリスクを受け入れていました。高い安全水準を持ったハイテク国家ではリスクが現実の事故につながることはないと確信していたからです。しかし、いまや事故が現実に起こってしまいました。福島事故は私の態度を変えたのです』

あの福島原発の事故で、日本は多大な犠牲を出した代わりに貴重な経験と反省の、お金には代えられないノウハウを得た。私はこのノウハウを決して無駄にしてはいけないと考える立場だが、何れにせよ原発についてはもう少し深く考えてみる必要を感じる。

🔘今日の一句

 

春の灯に卑弥呼(ひみこ)の時代学びをり

 

🔘健康公園のソメイヨシノヤマザクラはほぼ散ってしまったが代わって満開を迎えているのは八重桜(サトザクラ)