「物語 朝鮮王朝の滅亡」

金 重明(KimJungMyeong)著 「物語 朝鮮王朝の滅亡」岩波書店 刊 を読み終えた。

著者は在日二世の小説家で本の題名に「物語」と付いているように、史料に基づいて歴史的事実を考証するのではなく「朝鮮王朝の滅亡」という重苦しい事実を平易に物語風に書こうとしているものである。

往々にしてこういう場合、個人の主張が前に出てしまいがちになるが、その部分はかなり抑制的で事実を書くという姿勢がうかがえ、日本人読者としても違和感を余り感じなくて済んだ気がしている。

この本は14世紀末に李成桂(イ・ソンゲ)によって建国され「李氏朝鮮」と呼ばれた国が、1910年8月韓国併合と呼ばれた日本との条約によって滅亡するまでの歴史を追跡したものである。

著者は、李朝の改革を志し中興の名君といわれ「英正時代」とも称される、第21代・英祖(ヨンジョ・1726ー76)、第22代正祖(チョンジョ・1776ー1800)の治世から書き始める。

余談ながら私は一時期「チャングムの誓い」など韓流歴史ドラマを面白く見ていたが、その中のひとつ「トンイ」の生んだ子が英祖であり、その孫で「イ・サン」の主人公が正祖である。

改革は中途半端なものに終わり、党派闘争や官僚の苛政に明け暮れる李朝は近代化に大きく遅れ衰退の道を歩み、

・清(しん)や日本からの内政干渉

・日朝修好条規の締結

・壬午軍乱(じんごぐんらん)甲申政変(こうしんせいへん)

東学党の乱(甲午農民戦争)

・朝鮮を戦場にした日清戦争

日露戦争

などの政変、内乱、外国からの干渉、外国同士の戦争による国土の荒廃などを経て、日韓保護条約による植民地化、更には韓国併合により李氏朝鮮大韓帝国は滅亡することになる。

🔘帝国主義の時代であり現在と状況は異なるにせよ、当時の日本の行動は歴史的事実として重く迫って来るところがある。

また国が衰亡するとは、こういう経過をたどりこういう結果に至るのだと突きつけられている気がする。

🔘今日の一句

 

時雨かな空の焼けたる朝ぼらけ

 

🔘昨日の朝は天気予報で「下り坂」と云っていた通り、東の旗振り山方向で強烈な朝焼けが20分程度山火事のように続いた。体操の折りに運良くスマホで写真を撮りプリントして館内に掲示して貰った。