「歴史に裏切られた武士 平清盛」

上杉和彦著「歴史に裏切られた武士 平清盛アスキー新書刊 を読み終えた。

この本は標題に表されているが、一般的に驕る独裁者として悪人のイメージが定着している平清盛について、最近の研究成果を踏まえながら清盛の実像に迫ろうとするもので、著者は日本中世史の専門家で私は、鎌倉幕府源平合戦の関連本でお世話になった記憶がある。

私が引っ越して1年半を超えた神戸は、平清盛に非常にゆかりのある地で、彼が修築し瀬戸内海運を経て日宋貿易の拠点にした大輪田泊(おおわだのとまり)は現在の神戸市兵庫区の海岸で、和田岬が西風を抑える古代からの良港で近世まで兵庫湊として栄えた。

また出家後京から居を移した福原は、神戸市中央区から兵庫区にまたがる地域で、ここから政治的実権を行使し、例えば後白河上皇院政を停止して幽閉する「治承3年(1179)の清盛クーデター」の折には、福原から数千騎の武者を率いて上洛し果断な処置を行っている。

清盛の悪人説は、源頼朝の旗揚げを促した以仁王(もちひとおう)の令旨(りょうじ)や平家物語説話などによって広く流布する。

特に清盛の晩年に起きた治承のクーデターに於ける残虐な刑罰執行や、大仏や東大寺等が焼亡した南都(奈良)焼き討ち事件は有名で、これらは独裁権力を確立する一方で政治的に孤立した清盛が、武士としての本性を表したと著者は書き、それまでたどってきた人間味のある清盛の行動と対比させている。

一般的に日本史に於ける中世とは、荘園制をベースにして武士が国家の軍事警察を独占する時代で、鎌倉時代をその始まりとするのが従来の考え方であった。

然し著者は、最近の研究成果も踏まえ鎌倉時代と清盛の時代を対比し軍事支配、守護地頭制の内実、文書行政などから清盛の時代が既に先行しているとして、日本の中世は清盛の時代から始まっていると結論付けている。

🔘今日の一句

 

孫皆が自立を果たし年暮るる

 

🔘スーパー店頭のラナンキュラス