「この世を生き切る醍醐味」

樹木希林「この世を生き切る醍醐味」朝日新聞出版刊  を読み終えた。

この本は女優・樹木希林さんがガンで亡くなられる半年前、3日間7時間に及ぶ朝日新聞論説委員が聞き手のインタビューを取りまとめたもので巻末に一人娘の内田也哉子さんの葬儀後のタイミングでの「母・樹木希林を語る」も併せて収録されている。

聞き手である石飛徳樹氏は本のあとがき・インタビューを終えてで、

「2018年春、新聞連載のために3日間、樹木さんにインタビューをした。仕事との向き合い方、結婚生活や子育てのありよう、そして病気と死生観のお話・・・。いずれも世の常識とは大きくかけ離れていて、それゆえに、こちらの凡庸な頭が大いに揺さぶられた。樹木さんがこんなに腰を据えて、自らの来し方を体系的に語ったものは読んだことがない。」

等と書かれており本の内容を要約しているのかも知れない。

樹木希林さんの語った内容で私の記憶に残ったものの一部

(出演作が国内外で評価されていることを聞かれて)

『いや、これはたまたま恵まれただけなのよ。仕事は出演依頼が来た順番とギャラで選んでいるんだから。私はね、仕事に思い入れがないのよ、昔から』

『私、よく娘に言われんだけど「お母さんって愚痴っていうのを言ったことがないね」って。「ああ、もう、こうすればよかったのにい」とかは言わない。「ああ、そうなっちゃった。さいですか」って。「じゃあ、そこからこうしていくか」っていうような感じね』

『こうやって、あなたにずっと私の話をしてきてね、何が分かったかというと、その都度その都度、いろんな人との出会いによって、つぶれてしまったり、持ち上がったり、影響を受けながら生きてきたってことよね。いまなら自信を持ってこう言えるわ。今日までの人生、上出来でございました。これにて、おいとまいたします。』

娘・内田也哉子さんのインタビューの記憶に残った箇所

『あれだけの病気を抱えていて一度たりとも「つらい」とか「痛い」とか、弱ってるところを見せたことがなかったですね。だからといって、頑張って虚勢を張って「弱いところを見せないのよ、私は」という感じもなくて、言っても仕方がないことは言わないっていう人だったんでしょうね。』

🔘演技も個性的であったが、人間的にも個性が輝いていたことを今更ながら思い知らされた。

🔘一日一句

 

夕凪に航跡長く漁(いさ)り船

 

🔘近くの施設の庭、ヒメヒオウギズイセン