女優・樹木希林さんの前の名は悠木千帆だったが、その頃はあまりに好きな俳優ではなかった気がする。
いつの間にか樹木希林になりTVドラマやTVのCM、特に映画では「なくてはならない人、必要とされる俳優」という感じで受けとめていた。
特に河瀬直美監督の「あん」や大森立嗣監督の「日日是好日」は私の好きな樹木希林さんの出演作である。
キネマ旬報ムック「いつも心に樹木希林」は副題に「ひとりの役者の咲きざま、死にざま」とあるように樹木希林さんの追悼本である。
樹木希林さんのエッセイや色々な人との対談、あるいはよく知った人たちの樹木希林にまつわる文章が沢山載せられている。
これらのなかから私なりにいいなと思えた箇所を抜粋すると、
①娘の内田也哉子さんの、葬儀の際の喪主代理の挨拶、
いつか言われた母の言葉を必死で記憶から手繰り寄せます。
「おごらず、他人(ひと)と比べず、面白がって、平気に生きればいい」
②夢千代日記で共演した吉永小百合さんとの対談で、
吉永さんに向けて「はあー元気ですねえ。(笑) 今日は久しぶりに小百合さんと逢って、本当によい年の重ね方をしてるなあと思いました。やはり女性でも、顔はその人の人生を表すものですし、いくら化粧しても、ひっぱっても縫い縮めてもバレますからねえ。ーーーーー」
③「あん」で共演した市原悦子さんとの対談で、
「でもね、こんな私も、昔は、たとえチョイ役で出た作品だったとしても、的外れな評価をされれば、その人の首根っこ掴まえて「この映画はこういうことなんだよ!」って言わずにはいられない性分でしたけどね。今はもうそんな体力はないね」
④「万引き家族」で共演した女優・松岡茉優さんの追悼エッセイから、
ーーーまだ青い私には希林さんのお人柄を理解するなんてとても出来ないので憶測ですが、希林さんは歳を重ねていくなかで、大きく太く厚くなっているのではなくて広く細く鋭くなっていかれたのではないか。
そうやって生きていくのは物凄く辛いのではないか。
そんな生き方が出来るだろうか。ーーー
◎面白く自分を貫かれた人のように感じている。
◎小さな川辺を埋めつくしているのはオギだろうか?