「ふりさけ見れば」②

近年小説についてはほとんど読むことが無くなったが日経新聞に連載中の作家・安部龍太郎さんの小説「ふりさけ見れば」は例外で、当日読めなかった場合は翌日に読むなどして一日も欠かさず日課にしている。

遣唐使の時代、何れも使節団の一員として唐に渡った、実在の有名人物、阿倍仲麻呂吉備真備を主人公にして物語が展開していくが、一般的な遣唐使の目的として理解されている、大国・唐に朝貢をし唐の優れた文物を持ち帰り、先進的な知識や技術を導入するといったことと併せて以下の二点を隠された目的に挙げ、小説の骨格にしている。

①白村江(はくそんこう)の戦いで大敗し唐の侵略に怯えた日本は、冊封国(さくふうこく)として生きる道を探るが、それには両国の歴史書の食い違いを無くす必要があり、日本国の正統性を示す国史編纂のため超機密とされる過去の中国国史・この場合は「魏略」にどのように日本が書かれているかを探ること。

②日本で起きている天智天皇系と天武天皇系の角逐、天皇家と藤原家との争いを一掃して天皇を中心とする仏教の教義を基にした国造りの為、仏教の戒律を授ける指導者として鑑真上人を招聘する。

この二つの大目的のため阿倍仲麻呂は唐に残り唐の朝廷で出世を果たす。

吉備真備は一度日本に帰り挫折を味わった後挽回を期して再度遣唐副使として唐に入国し、二人して大目的達成のために協力する。

小説は二人が鑑真上人と共に帰国船に乗り込む直前にまで至っているが既に判明している歴史的事実から見ても、まだまだこれから紆余曲折の展開が予測される。

当時の東アジアや日本の置かれた状況をもとにこの二つのテーマを設定し小説を組み立てていく著者の構想力や文章力には脱帽である。

以前同一著者の「等伯」という作品でその面白さに牽かれたが今回は当時の東アジア情勢の勉強になると共に「等伯」以上の面白さを感じている。

 

🔘健康公園で周りの樹木に見とれ道を外れていたらスラックスがいわゆる「ひっつき虫」だらけになってしまい引き剥がすのに難儀した。

どうやら外来種「アレチヌスビトハギ」の種子らしい。表面にカギ形の毛が生えてマジックテープのようにくっついて他者に運んで貰い子孫を遺す。

その種を遺すための仕組みには感心してしまう。

 

【無職にて ひっつき虫の 運び屋に】