「ふりさけ見れば」が終わってしまった

安部龍太郎さんが日経新聞に連載されてきた「ふりさけ見れば」が全567 回で、とうとう終わってしまった。

奈良時代に大国・唐と我が国が朝鮮半島情勢などを経て緊張状態にあるなか、遣唐使として派遣された阿倍仲麻呂吉備真備(きびのまきび)を主人公に、当時の東アジア情勢を交えながら展開する壮大な歴史小説である。

従来遣唐使の使命としては主として唐の先進的文物を取り入れることがいわれていたがこの小説では加えて

・仏教を国の統治の基本に据えるため仏典の入手を進めると共に戒律を正すべく高僧・鑑真を招聘する。

・唐との朝貢関係友好関係を確固とするため、唐の歴史書に書かれてあることと日本の歴史書を整合させるべく中国正史の日本記述部分の秘密を探る

などを中心に据えて遣唐使や当時の日本の苦難の歴史が描かれていた。

阿倍仲麻呂はついに帰国の願いがかなわず異国で没するが、異国の国家登用試験である科挙に優秀な成績で合格、異国の朝廷で累進し日本人の優秀さを歴史に残した功績は計り知れないものがある。

私も時代こそ違うが中国で働いたことがあるが、異国で働くことの難しさは痛いほどわかり、更にその国のトップ集団に上り詰めるなどまさに超人的な努力の賜物だろう。

吉備真備は2度の遣唐使を経て帰国後右大臣まで昇進し吉備大臣(きびのおとど)と呼ばれたが、77歳で隠棲、故郷である現在の岡山県倉敷市真備町(まびちょう)に帰り、小田川のほとりで現在琴弾岩(ことびきいわ)と言われている辺りで清流を眺めながら琴をひいて余生を過ごしたと伝わる。

実は私の娘が住んでいるのが吉備真備にゆかりの真備町でこれも何かの縁かと思っている。

個人的に「ふりさけ見れば」ロスが起こりそうなところ、引き続いて作家・辻原登さんの「陥穽(かんせい)・陸奥宗光の青春」が早速始まった。

辻原登さんの対馬を舞台にした前作「韃靼(だったん)の馬」も感銘を受けた記憶が残っており陸奥宗光の人物描写を楽しみにしている。

 

播磨灘 霞に浮いて フェリーゆく】

 

 

🔘健康公園で見かけた小鳥、これはムクドリと思われる。