著者は鎌倉時代を専門領域とする歴史家らしく、本のあとがきに、「卒論・修士論文・博士論文を含め、これまで発表してきたすべての研究論文・研究書は、本書を書くための基礎作業であったといってよい」と書かれている。
著者は従来の歴史家等が種々指摘した鎌倉幕府が滅亡した以下のような原因説について、鎌倉時代の初期からの権力闘争や政治体制を深く追跡し異を唱えている。
・ 荘園制を揺るがした悪党の跳梁(ちょうりょう)
・対蒙古防衛策の重圧
・後醍醐天皇の倒幕運動
・北条氏への権力集中と幕府の専制化
・最後の執権・北条高時の暗愚
著者の論旨は、鎌倉時代を通じた武力闘争、政治変動を経て鎌倉時代の後期は以下のような実態になっておりそこに滅亡の原因があると結論付けている。
・中央要職を世襲によって支配し、鎌倉という都市に集住して全国に散在する所領を経営する特権的支配層に支配された「二流の王朝」とも呼ぶべきものになっていた。
・特権的支配層は全御家人の2.5%~3%程度で、地方に基盤を持たない武士として異質の存在で、鎌倉幕府は御家人にとって特権的支配層が彼らを利用抑圧し彼らの財産を奪うための機構と化していた。
・このような状況下、後醍醐天皇の登場により御家人たちが、鎌倉幕府創設時と異なっている幕府の実態を認識し、新たな武家社会の構築を目指し鎌倉幕府を滅亡に導くことになる。
🔘非常に論旨が明快で目から鱗のようなところがあるが、これをきっかけにして以後も他の説にも目を向けて自分なりの見方を整理していきたい。
🔘今日の一句
秋燈下生成AI問ふてみる
🔘健康公園、ヒャクニチソウ(百日草)と思われる。