「オスマン帝国英傑列伝」

小笠原弘幸著「オスマン帝国英傑列伝」幻冬舎新書刊を読み終えた。 オスマン(トルコ)帝国は13世紀末に産声をあげて領土を拡大、数世紀のうちにイスラム世界の覇者となり、16世紀には世界で最も強大な国家となるが、18世紀末よりヨーロッパ列強の圧迫を…

生誕100年司馬遼太郎 雑談「昭和」への道②江戸日本の多様さ

今年は作家・司馬遼太郎さんの生誕100年に当たるということでNHKでは昭和61年に放送された、司馬さんが昭和の戦争までの時代を語る、『雑談「昭和」への道』を再放送しており、10月9日のこのブログに書いた。 放送は週一回のペースで直近は第11回…

車検で思ったこと

神戸に引っ越してきて車に乗る機会は用事で大阪を往復するか、買い物の運転手を務めるくらいのもので、以前に比べめっきり減った気がしている。 しかし走行距離にかかわらず年月が経つと車検の通知がやって来て、その見積もりに出掛けてきた。 街の修理工場…

山口県地方史研究・吉田松陰が幕末長州藩政治に与えた影響について

山口県地方史学会の会誌・「山口県地方史研究第130号」に掲載されている内の二つの興味ある研究のもうひとつ、萩市 相島宏美氏の「吉田松陰が幕末長州藩政治に与えた影響について」を読ませて貰った。 吉田松陰が、安政6年(1859)安政の大獄で処刑さ…

「幕府」とは何か・武家政権の正当性

東島誠(ひがしじままこと)著『「幕府」とは何か・武家政権の正当性』NHK出版 刊を読み終えた。 然しこの本を読み終えるのにはここ数年例が無いほど難儀した。2~3度途中で止めようかと思ったがヘトヘトでたどり着いた気がしている。 その訳は、あらゆる箇…

映画「かもめ食堂」

NHKBSで放映された2006年の日本映画「かもめ食堂」を録画して見終わった。実に不思議な感覚に陥る映画で、時間がゆったりと過ぎて行き、見終わると日常の雑事などどうでもよくなるような錯覚が起き、精神衛生上実に効果があるような気がする。 これと全…

厚狭毛利家文書の地元移管

私の生まれ故郷・山口県厚狭周辺を給領地にしていた厚狭毛利家のことはこのブログで色々と触れて来た。 先日山口で行われた山口県地方史学会の70周年記念大会で「厚狭毛利家文書」と呼ばれる貴重な史料が、厚狭図書館に保管保存されるまでの経緯を書いたも…

「武士の衣服から歴史を読む/古代・中世の武家服制」

佐多芳彦著「武士の衣服から歴史を読む/古代・中世の武家服制」吉川弘文館を読み終えた。著者は歴史学の教授で貴族社会の服装研究の延長で興味が武士に広がりその風俗研究のなかから衣服に絞ってたどり着いたのが本書ということである。 通常現代の本は右開…

山口県地方史研究・大内義隆の官位に関する一考察②

12月10日の続き 前回、中国地方や北九州に君臨した戦国大名大内氏の最後の当主・義隆が足利将軍家を超えるような官位を得ていたことを書いたが、ではなぜそのようなことが可能になったのか、研究者の西田氏は史料から得られたこととして、義隆から朝廷へ…

放談会(11月延期分)・ジェンダー

昨日は本来11月に実施予定であった施設有志参加の放談会が遅れて実施され、男女合計5名の出席でテーマはジェンダー(社会的性差)。 世界経済フオーラムが男女格差を算出する2023年の日本のジェンダーギャップ指数は、総合指数で過去最低の全146ヵ国…

山口県地方史研究・大内義隆の官位に関する一考察①

専門外ながら入会させて貰っている山口県地方史学会から会誌「山口県地方史研究第130号」が送られてきたが、今号には私の疑問にも応えてくれる興味ある研究が二つ載せられていた。そのひとつが山口市の西田智洋氏の「大内義隆の官位に関する一考察」であ…

昭和24年生懇親会/クリスマス飾り付け

昨日は住んでいる施設の昭和24年生まれ(多少許容範囲あり)の初めての昼食懇親会があり家内と共に垂水の和食屋さんに出掛けて来た。 施設内では昭和24年組はまだ若手らしく少数派で10名の参加であった。 店の形態からテーブルが二つに分かれているため…

「逆さひょうたん」

激動の幕末は色々なエピソードに彩られているが、これもそのひとつかもしれない。 土佐と長州の要人が江戸で会同、酒を酌み交わした席で土佐前藩主で藩の実権を握る山内容堂(やまのうちようどう)は長州の周布政之助(すふまさのすけ)や久坂玄瑞(くさかげんず…

倍賞千恵子さん・私の履歴書

日経新聞文化欄に著名人が交代で各々1ヶ月にわたって連載する「私の履歴書」と題するコラムがあり、通例自分の半生、来し方などがかなり突っ込んで書かれている。 12月に入り突然、倍賞千恵子さんの写真と共に連載が始まったのを見て少々嬉しくなって熱心…

12月句会

昨日は今年最後12月の句会で13人の出席があった。前月は同窓会と重なり欠席したので久しぶりの雰囲気を味わった気がしている。 私は毎日のブログのなかから選んで次の五句を出した。 ①時過ぎて同胞(はらから)想う初時雨 ②芭蕉句を読経が包む冬御堂 ③七十…

「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」

大木 毅著「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」岩波新書刊を読み終えた。著者とは初めての出会いで、専門はドイツ現代史、国際政治史とのことである。 この本の末尾「おわりに」に著者は「新書でスタンダードな独ソ戦通史を書くという大きな課題が、はたして達成された…

司馬遼太郎さんの随筆⑦播州の国

司馬遼太郎全集に収録されている随筆のなかに、昭和41年の「日本読書新聞」に掲載されたという「播州の国」という短いエッセイが収録されている。 よく知られているように司馬さんの家は数代前まで播磨国(はりまのくに・兵庫県)に住んで居られたそうで、記…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など⑤亀山公園山頂広場

帰りの新幹線の時間を見計らい、同級生に連れて来て貰ったのが山口市亀山公園山頂広場、山といっても小高い丘のようでもある。登ってみると360度の眺望で防長二州の中心が見渡せ、地形や地勢からこれは城跡ではないかと思わせた。 山頂への途中の紅葉 帰…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など④菜香亭の書

大会を終えて、同級生に山口市にある「菜香亭(さいこうてい)」に連れて行って貰った。明治時代に山口の迎賓館と呼ばれた料亭で元々別の場所にあったが、廃業を惜しんだ市民の請願で、現在地に観光や市民交流の場として移築公開されたものであるらしい。 広間…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など③発表内容

記念大会のテーマ『萩藩「一門」研究の新展開』の発表内容については専門的内容が多く濃いため、ここでは発表された六つのテーマについて簡単な紹介に留めさせてもらうことにした。 (尚一門家についての基礎的なあれこれは11月28日のこのブログを参照下…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など②大村神社

記念大会聴講の前日、中学同級生の案内で長州藩の明治維新立役者のひとり大村益次郎の生地に、本人を祀って建つ大村神社に連れて行って貰った。 少しおさらいをすると大村益次郎は周防国(すおうのくに)鋳銭司(すぜんじ)村(現山口市)の村医者の子として生まれ…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など①一門あれこれ

専門外ながら入会させて貰っている山口県地方史学会の70周年記念発表会が11月26日に山口市の県立図書館で開かれ、そのテーマが私が追跡している厚狭毛利家を含む、『萩藩「一門」研究の新展開』ということもあり、是非にと思い聴講に出掛けてきた。 ま…

「女性差別はどう作られてきたか」

政治学者・中村敏子著「女性差別はどう作られてきたか」集英社新書 刊を読み終えた。 私にとってこのようなジャンルの本を手に取るのは全く初めての試みなのだが、次回の放談会のテーマが「ジェンダー」であり、一度くらいは関連する本に目を通しておかねば…

NHKスペシャル混迷の世紀「世界"債務危機"は止められるか」

NHKのドキュメンタリー「混迷の世紀」は直近の国際的な問題点や課題をテーマにして掘り下げる調査報道番組である。 今回のテーマは「世界"債務危機"は止められるか」という題であり、ウクライナやパレスチナなどの目に見える国際的な危機の裏で目に見えにく…

玉鋼の十二人・奇跡の鉄は生み出せるのか

NHKBSで放送されたドキュメンタリー「玉鋼の十二人・奇跡の鉄を生み出せるのか」を録画して観終わった。 これは日本刀の素材で玉鋼(たまはがね)と呼ばれる鉄を生み出すため古来の製鉄法・「たたら製鉄」の現場にカメラを据え12人の職人の粘土をこねて炉を…

芭蕉「旅に病で」

先日大阪・御堂筋にある南御堂に用事があり、境内庭園の芭蕉の句碑を紹介した。芭蕉は元禄7年(1694)生地・伊賀上野から奈良を経て大阪に着き体調を悪くする。 門人達の手で病床を当時南御堂前にあった出入りの花屋の静かな座敷へ移しそこで臨終を迎えた…

「古代史の基礎知識」と「古墳」/ 厚狭の前方後円墳

吉村武彦編「新版 古代史の基礎知識」角川選書と土生田純之(はぶたよしゆき)著「古墳」吉川弘文館 刊を読み終えた。といっても「古代史の基礎知識」の方は古墳の部分に限定して読んだのだが。 元々歴史好きながら古代史は余り興味がなく、中世以降をもっぱら…

岸 信介「日米安保条約と私」

中学同級生から山口県の郷土資料を同窓会にハンドキャリーして貰った中に、郷土出身の元総理大臣・岸信介氏の書いた「日米安保条約と私」と題した本人の回顧文のコピーが入っていて、興味を持って読み終えた。 これは昭和57年(1982)に出版された本「証…

お土産の「調布(ちょうふ)」

一緒に大阪へ行く用事があり岡山県倉敷市に住む娘が訪ねて来たが、そのお土産のひとつに岡山銘菓「調布」というのがあった。 「調布」という名は東京都内の地名で馴染みがあったが、菓子の名前で「調布」とは初めてで興味が湧き、その由来を読むと以下のよう…

「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗」②

11月14日の続き 太平洋戦争に至る道程のなかで日本が世界から「どちらを選ぶか」と問われた3回の重要分岐点について、なぜ日本はより良き道を選べなかったのかを史料を読み込み考えるのがこの本(若者への講義録)の著者の狙いである。 私は何度もこの道…