作家・司馬遼太郎さんの全集を図書館で借りて特に随筆などを中心に時折読み返している
この中に「人と軌跡」と題した作家や芸術家に関する文章を集約したものがあり『石上玄一郎(いそのかみげんいちろう)氏と「彷徨えるユダヤ人」』が載っている。元々この内容は該当本の解説として書かれたものである
実は古い記憶に「彷徨えるユダヤ人」という本が刻まれてあり、いつか読まなければと思いつつ月日が過ぎたような記憶が残っていた。
この際と思い神戸市の図書館ネットワークを使って検索、他館に有るのを垂水に取り寄せて貰い借り出してきた。色々あるにせよ日本の教育行政が機能しているのを非常に有り難く感じる瞬間である。
この「彷徨えるユダヤ人」の初出は1974年秋で私の読んだレグルス文庫版は1991年に出版されこの解説を司馬遼太郎さんが担われているわけである。
著者は太平洋戦争の始まった翌年、当局から睨まれていた立場もあり中国・上海の租界地に渡り、ヨーロッパから逃れてきたユダヤ人難民・イリヤや家族と知り合う。
これを糸口にして終戦を迎えるまでイリヤ達との交遊や自らの思想信条を通じて、いわゆる「ユダヤ人問題」に関心をもち、イスラエル建国前の段階でなぜユダヤ人は彷徨うのか、彷徨うことになったのかを記述していき、日本人の持つユダヤ人に向ける目を覚まさせようと努めているように見える。
私の持ついままでのユダヤ人に関する知識は
①映画「十戒」で見た預言者モーゼに率いられエジプトを脱出するなどの旧約聖書の世界
③若い時代に出会ったニュースで知る中東戦争
④現役時代仕事で約1週間訪れたイスラエルの風土、そこで見たユダヤ人の生活、宗教、環境、アラブとの関係等々
等が基礎になっており、金曜日の日没に始まり土曜日の日没に終わる安息日の不思議で厳格な習慣などは今でも驚きの記憶になっている。
深い知識と興味を基にしてユダヤ人の深部や歴史に遡っているだけに難解な本であるが、私のユダヤ人についての知識がもう一歩だけ前進したことは確かである。
今も続くパレスチナ問題を理解する上でも助けのひとつになるかもしれない。
【冬の水 目覚めの頬を 叱咤して】
🔘ベランダから隣接の公園越しに北摂方向を見る。秋が終わり徐々に冬の気配が公園に感じられる。
気温が下がり空気が澄んでいる。