映像の世紀バタフライエフェクト「砂漠の英雄と百年の悲劇」

NHKで再放送されたドキュメンタリー番組・映像の世紀バタフライエフェクト「砂漠の英雄と百年の悲劇」を録画して観終えた。

再放送は現在のパレスチナ、ガザの戦争状態を踏まえ、その根源の一部を解き明かした内容が時宜を得たものだと思われたのだろう。

バタフライエフェクト(蝶の効果)とは、蝶が羽ばたくような小さな力学的現象が、例えば遠くの場所の気象に影響を与え得るということなどを説明した用語であり、この場合「蝶の羽ばたき」は第一次大戦中にアラブ軍のゲリラを率いてオスマン・トルコに戦いを挑んだ砂漠の英雄イギリス軍の情報将校T・E・ロレンスであり、「その影響を受けた」のが現在のパレスチナで、更にアラブ人とユダヤ人との紛争ということになる。

ロレンスには「知恵の七柱」という著作が遺されており、これを原作にしたのが映画「アラビアのロレンス」で監督・デビット・リーン、主演がピーターオトゥール、記憶に残る素晴らしい映画でTV放映も入れると通算4~5回観た気がする。

第一次大戦当時アラブ世界の盟主はオスマン・トルコで同盟国側に与していたが、敵対する連合国側のイギリスは、トルコの圧政に苦しむアラブ民族に将来の独立をエサにしてゲリラ活動を焚き付けロレンスを送り込む。

一方イギリスは金融支援を狙い同じような約束をユダヤ人世界にもしており、結果的に英雄・ロレンスとイギリスはアラブ世界を裏切ることになり、第二次大戦でのナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺を経て、イスラエル建国から中東戦争に至る両民族の憎しみの連鎖の起点になってしまう。

映画では、ロレンスは母国イギリスがフランスと密約を結びアラブを裏切ること、またアラブ世界も彼を必要としなくなったことを受け止め、帰国しオートバイ事故で亡くなる。

私は現役時代、日本の赤軍派がテルアビブ空港での銃乱射事件を起こした後に、空港での厳重な検査を経て仕事でイスラエルに行ったことがあり、テルアビブ近郊のユダヤ人、アラブ人が交錯する入植地も訪れた。

その時双方が表面上は穏やかに生活しているのを見ており、その記憶と異なるニュース映像を見るたびに悲惨さに暗たんたる気持ちになる。

ユダヤ人にも米映画「十戒」に見られるような旧約聖書以来の信仰と、近代に至るまで迫害を受け続け、約束の地にようやくたどり着いた歴史があり、アラブ人にもそこで長く暮らしイスラム教を信仰し聖地を守ってきた歴史がある。

どちらをどうといえるような立場にないが、憎しみの連鎖の始まりをもたらしたのはあくまで第三者であり第三国であるという観点に立ち、この正義と正義が激突する連鎖をどこかで断ち切る途はないものかと思う。

🔘今日の一句

 

屈託が歩幅に出でて朝の秋

 

🔘健康公園、クロガネモチの実