「松本清張と日本の黒い霧 」

NHKBSで放送された「松本清張と日本の黒い霧  未解決ミステリー」を3月25日に録画したままであったが1ヶ月ぶりにようやく観ることが出来た。

松本清張の代表的作品のひとつ「日本の黒い霧」をもとにして特にその中の「下山国鉄総裁謀殺論」を取り上げ戦後GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の施政下で起こった不可解な未解決事件に迫ろうとするものである。

番組では松本清張をよく知る作家・横山秀夫、ノンフィクション作家・保阪正康イラストレーター・みうらじゅんの各氏のコメントを交え、俳優・大沢たかおさんがいわゆる「下山事件」を解明しようとする松本清張を演じる。

推理作家で知られる松本さんには膨大な歴史分野の作品がある。古代史から近現代史まで幅広く関心を持ち特に近現代を扱った「日本の黒い霧」「昭和史発掘」は松本清張さんの基本姿勢である反権力の立場で書かれたノンフィクション作品で私は若いときに一度読んでいる。

いわゆる「下山事件」は私の生まれた昭和24年に発生した当時の国鉄総裁が轢死体で発見された事件で、自殺、他殺など論争が長く続いた未解決事件で私の少年~青年期にかけてもマスコミで色々かまびすしかった記憶がある。

当時国鉄GHQの指示で大量の人員整理の話が持ち上がり激しい労働争議となっていたが当然下山総裁もその渦中の人で、松本清張さんは色々な材料や推理を駆使しこの事件はGHQの謀略から発生したものであるとの推論を組み立ててあり、一定の説得力を持つものになっている。

この番組を観ることになり図書館へ行き松本清張全集の中から「日本の黒い霧」を借り出し読み始めているが、何れにしても松本清張さんの執念とも言うべき取材力、推理力、構成力には脱帽せざるを得ない。

真実がどこにあるかまでは判断できないが、このようなアプローチが権力を持つ側が襟を正す一助になるのは間違いないと思われる。

「日本の黒い霧」には最終章「なぜ日本の黒い霧を書いたか」が含まれているがその中で松本清張さんはこのシリーズを書くのに最初から反米的な意識で試みたのでもなく当初から占領軍の謀略というコンパスを用いて、すべての事件を分割したのでもなく帰納的にそうなったに過ぎないと書かれている。

ただこの「日本の黒い霧」のなかのひとつ「謀略朝鮮戦争」については作者の推論には多少の無理があるような気がしている。

 

【幼子の指差す先に仏の座】

 

🔘健康公園、タブノキ