円安のなかで考える

昨今の1ドル135円前後の為替をあらゆるマスコミが「急激な円安」と呼んで、毎日のニュースの格好のネタになっており私も一度はここで書いておかなければとつい思ってしまった。

年の始めには1ドル110~115円程度であったことを思うと、ある角度からの見方では円の価値が半年で15~20%も変動している訳で急激なという注釈もうなずける。

この急激な変動の原因を私の見聞きする範囲のマスコミ、アナリスト、学者のほぼ100%の人が日米の金融政策、政策金利の違いから来ていると判断している。
米国に追随して欧州その他も最近のインフレ対策から政策金利を相次いで上げ始めている。

自然の摂理としてお金が利息の低いところから高いところへ行くことから生じている円安だと断じているわけである。
物価の比較、購買力平価からみたドル円の妥当な相場は1ドル110円前後とのことなので20円以上の分が今後の金利差を見込んで生じているのだろう。

円安が輸出企業に恩恵を与えるのは間違いなく、以前は円安に振れると必ず株高になったが今回の円安局面はむしろどちらかと言えば株安の方が強く、企業の収益がこの先悪化する方向に行くと世間が判断していると思われる。

家計についても輸入原材料やエネルギー価格の負の影響が出始めている。
この企業や家計への悪影響を防ぐ為、金融緩和をやめて各国と同じように金利が高くなるように誘導しないのかという圧力が当然日本銀行にかかっているが、黒田総裁は先日の会見でも円安の負の影響は認めつつ金融緩和は続けることを話した。

金融緩和をやめた場合の景気失速懸念の方が円安による影響に勝るとの判断と思われ私も現時点では妥当と思っている。
一方これは私の見方だが、うかつに金利を高くすると現在の国の債務・1000兆円以上分の利息(1%高くなると年間10兆円増)の支払いが一挙に増えて財政赤字が更に急激に悪化することが見込まれ、この事も日本銀行の手足を縛っているのではないかと推測する。

国は貨幣を発行出来るので債務が増えても構わないという説があるが、それは平時の話であり非常事態、緊急事態などの際は多額の債務が足かせになり、適切な対応が躊躇されるような事態が起こり得ることを忘れているのかもしれない。
今回この足かせが少しだけ表面に出てきたような気がしているのは私だけだろうか?

国の信用失墜は平時ではなく大災害、恐慌、外圧騒乱などをきっかけに始まる、それを防ぐためには平時からの備え、財政では債務を減らし余力を残しておくことがその対応能力を上げ復元力を確かにすることを忘れてはいけないように思う。

経済活動の基本は成長、競争、分配の三角形にあると経済学者の浜矩子(はまのりこ)さんなどが普段から云われているが、私の見方では現在の日本は成長の部分が大きく低下、競争の部分は少し低下、分配は高齢化のために大きく増加、といういびつな三角形になっておりこれが国の債務増加と財政悪化、ひいては国力低下の根源になっていると思われる。

これを正三角形にするためには成長、競争力を高め大きな三角形を維持するか、分配を押さえ小さな三角形を目指すか、中途半端でないはっきりとした方向付けと実行が必須と思われる。

誰もが真剣に考えることが必要で、このままでは益々いびつな三角形になり修復が不可能なレベルになってしまわないか心配している。

🔘朝の健康公園で、これは何の木だろうか?変わった形の花を付けている。