月刊誌・文藝春秋には巻頭随筆というページが必ずあり各界の人が寄稿することになっている。
10月号のなかに今年退職するまでNHK でドラマやドキュメンタリーの「時代考証」を担当したという元NHKディレクターの大森洋平氏が「時代考証の三大極意」と題して時代考証のキーポイントを書かれている。
ネットで経歴を見ると時代考証専門の職員で朝ドラや大河ドラマなどを含む考証を広く手掛けて来た方で最近その内容を「考証要集」として出版されたとのことである。
私も歴史に興味ある方なので、今まで大河ドラマを含め歴史ドラマは色々みてきたが、時々アレッと思ったり、やり過ぎと思えるようなことが多く、最近ではドキュメンタリー番組を除き基本見ないようにしている。
時代考証とは番組の台本や現場で歴史的事実と違う内容を指摘し修正させることと思われる。
筆者はその極意三つを
①「おかしなものはださない」
考証は裁判と違い疑わしきは死刑である。具体例のひとつで、戦前ドラマで憲兵将校が「憲兵」という腕章を右腕に巻いていたらNG(腕章は左腕に下士官や兵が巻くものである)
②「知らないで崩れているのはみっともないが知っていて崩すのはかっこいい」
何もかも史実通りにするのではなく一部をわざとぼかしたり変えたりすることで過去世界のリアリティが高まることがあるが、ドキュメンタリーでは禁じ手である。
③「時代考証とは『枠』を決めるための道具である」
ある時代にしっかりした物語の枠を構築できたら、そのなかで登場人物は自由自在に動き回って良い。ただしそこから絶対にはみ出てはいけない。
筆者は今年この仕事で「放送文化基金賞」を受けられたとのことで永年この三つの極意を貫かれた結果だと思うが、翻って考えてみるとこの三つは私が経験してきた製造業のもの創りプロセスに普遍的に適用出来るような気もしている。
🔘今日の一句
新米に農の辛さと悦びと