「戦国大名と読書」小和田哲男著 柏書房刊を読み終えた。
著者は中世史研究が専門でNHK大河ドラマの考証も担当、マスコミへの登場も多い。
著者は「はじめに」で、戦国武将がどのような勉強をしていたのか、いかなる本を読み、その後の行動をどのように規定したのかを追いかけてみたいというのが本書の趣旨と書いている。
色々と盛り沢山の内容の中で興味を覚えた2つの内容を書いておきたい。
①伊達政宗の漢詩
漢詩を詠んだ武将とその詩が色々挙げられているが、これは大阪の陣も終わり、平和な世を迎え生涯を振り返った伊達政宗の代表作で題が「酔余口号」酔った余りの口ずさみだろうか?
馬上少年過ぎ
世平かにして白髪多し
残躯天の赦す所
楽しまずして是れ如何
今の年齢になるとこの感傷にとても共感を覚えるのだが。
処で司馬遼太郎さんにはこの詩から題名を取り、伊達政宗を描いた小説「馬上少年過ぐ」があり、この小説もまたこの漢詩から始まる。
古い本だが書棚から探しだして、懐かしむ事になった。
この本の裏表紙には1970年8月発行の初版本となっており、定価440円。
②徳川家康と直江兼続の本を通じての交流
徳川家康と、上杉家執政・直江兼続は同時代きっての読書人で蔵書家でも有名だが、関ヶ原の戦いのきっかけになった家康の非道を弾劾する兼続の書状、いわゆる「直江状」の経緯や関ヶ原後の上杉家処分からすると両者は仇敵同士になる。
然し天下が治まった時点で、お互いは読書家であることを認め合っていたようで、側近を通じた本の持ち合わせを尋ねる家康から兼続宛の書状が残されており、とても興味深い。
わだかまりを捨てて本の愛好家として親近感を抱くようになった、云わばオタク同士の交流かもしれない。
近くの家の塀から顔出ししている不思議な直立の花