いつもの歩きの休憩処・コメダ珈琲店で読む週刊文春にはエッセイストの平松洋子さんの「この味」という1ページの食エッセイが必ず載っている。
今週は「トムヤムクンの将来」という題で。
今秋ユネスコが選定する世界無形文化遺産に、タイ政府が「トムヤムクン」を推薦するというニュースを聞いて、2013年日本の和食が選定されたことを引き合いに出しながら、日常的に工夫しながら食卓を更新し続けているようなものを、政治的な思惑で上から目線で取り上げるようだと批判的な文章になっている。
内容はともかくとして、ついタイで勤務した時代に食した「トムヤムクン」を思い出し無性に懐かしく食べ飲み干したくなってきた。
「トムヤムクン」はタイ料理で定番のスープで、中国のフカヒレ、ロシアのボルヒチ、フランスのブイヤベース等と競い、時折世界3大スープといった処にも顔を出す。
トムはタイ語で煮る、(ごはんはカーオ、カーオトムでお粥)
ヤムは混ぜる、(春雨はウンセン、タイ料理の定番ヤムウンセンは春雨サラダ)
クンはエビで、調味料にナンプラー(魚醤・ぎょしょう)、マナウ(小レモン)、唐辛子、レモングラス、パクチー(香草)などが入ったエビ入りスープという感じで、辛いと酸っぱいが深く混ざりあっている。
エビが苦手という人はトムヤムプラ-で魚入り、トムヤムガイで鶏肉入りが出来上がる。
とにかくタイの人々が好きな定番料理で、一緒に食事に行くと彼らは大抵注文する。
見た目も赤くて激辛そうで、実際始めてすすった時は、いっぺんで拒否反応を示してしまった。
その後も食事の度に辛いからと断っていたが、ある日辛くないように注文しようと言われ、試しにそれをすすってみると、辛いながらも何とかクリアー出来て、あの酸味と少しの辛みが妙に頭に残って頻繁に注文するようになってしまった。
タイ語で辛いはペット、反対語のマイを付けて「マイペット」と伝えると一人で行ってもこちらが日本人と察して辛さを抑えて出してくれる。
タイ料理は、辛い、甘い、酸っぱい、いずれの味も最初の頃は私にとっては濃すぎる感じがしていたが、いつの間にか慣れてしまった気がする。年中暑いという環境が濃い味を好む風土を作り出しているのではないだろうか。
タイの食堂には必ずテーブルに、自分で味付け追加ができるように辛い、甘い、酸っぱい用の調味料が置かれている。
コロナに目処がついたら大阪のタイ料理店を探してみたい気がしてきた。
◎名前は分からないが垣根から顔を出す小さな木の花、今が盛り。