中断中の独り言/映画「山の郵便配達」

NHKBS で放送された1999年の中国映画「山の郵便配達」を長い間録画したままにしていたがようやく見終えることが出来た。

冒頭字幕で出てくる原題は中国語で「那山 那人 那狗・ナーシャン ナーレン ナーゴウ・あの山 あの人 あの犬」である。また併記されている英題は「POSTMEN IN THE MOUNTAINS」となっていて日本版の題名は英語の題名を直訳したものになっている。

1980年代始め頃の中国湖南省の山岳地帯が舞台で、長年にわたってこの険しい地域に、歩いて手紙を届けてきた郵便配達人が老いて引退を決め、その後を継ぐことを決めた一人息子と共に最後の配達行に出る。

その配達は往復223kmの距離の山道を、2泊3日かけて重い郵便荷物を背負い、川を歩き崖を登り配達する過酷なものである。

映画はその間の出来事、父と子の心の動き、過去の家族との想い出、手紙の受け取り人達との繋がりなどが、湖南省の山、田畑、少数民族の暮らしなどを背景にゆったり丁寧に描かれる。

これらの中で心に残ったエピソードのひとつ、配達の途中、息子に少数民族・トン族の娘との出逢いがあり父親も優しく見守り、今後のことを息子に尋ねたときの息子の答え「自分は山の娘とは結婚しない、母さんみたいに故郷を恋しがるのが怖い」

母親も山に住む少数民族の出身で、父親はここで初めて母親の故郷を想う心を知ることになる。

この映画の主人公はもう1匹いて、いつも配達に付いてくる「次男坊」と呼ばれるシェパード種の飼い犬、途中の休憩時、荷物の手紙が風に飛ばされた危機一髪の際に、手紙を素早く追いかけ咥えて回収に成功する場面では思わず手を叩いてしまった。

主人公達の行動や言葉を通じ「仕事」というものに対する真摯な向き合いが表現されていて、「山の郵便配達」という題名も充分理解出来るが、映画、映像全体として見た場合原題の「那山 那人 那狗」の方がより相応しい気もする。

湖南省は中国第二の湖で、漢詩などに吟われる「洞庭湖(どうていこ)」の南にあることからこの名があり、山岳地帯を多く抱え少数民族も多く暮らす。

この映画の映像の、深く雄大な山々、切り開かれた棚田、大きな水車、少数民族の暮らしなど、規模は違うが私の母親の里や子供の頃の生まれた村などの原風景を懐かしく思い出させるものがある。

地味ながら中国映画の良さがにじみ出た作品のような気がしている。

🔘今日の一句

 

ひまわりは向きに我を張る頑固者

 

🔘近くの施設の庭のひまわり