日経新聞の毎週日曜日に「NIKKEI The STAYLE」と銘打った本紙と違う紙質のライフスタイルに特化した10~12ページの付録紙がついている。
その最終ページにはいつも各界の人が執筆するエッセイの欄があり、今週はゲームクリエイターという肩書きの小島秀夫さんという方が「1975年映画への旅」という題で寄稿されている。
兵庫県川西市に住んでいた1975年小学校6年生の夏、片道一時間半かけての冒険旅で「自分だけの映画が見たい」一心で大阪梅田のOS 劇場に行き一番安い席で映画を見た思い出を綴っている。
スクリーンが両サイドに湾曲したシネラマ方式と最先端の音響設備を備えた洋画専用劇場で、「大人になったら最も贅沢な席で毎日映画を見てやるぞ」と思ったが、もうあの劇場もなくなったことなどに触れられている。
私も大阪に住んで一番最初に行った映画館はこの梅田OS 劇場で、観たのは米映画チャールトン・ヘストン主演の「ベン・ハー」、その湾曲して立体的な効果を志向した画像と、大音響の迫力に度肝を抜かれた記憶がある。
逆算して考えてみると私が「ベン・ハー」を観たのも1975年前後と思え、このエッセイの筆者の冒険の時期と重なっている気がし、また一番安いA席が1000円、一番高いSS席が2200円だったと書いているのも肌感覚に合うような気がしている。
大阪に住んでいた若い時分、洋画の大作映画はこのキタのOS 劇場とミナミ道頓堀の松竹座が双璧で、「アラビアのロレンス」「ローマ帝国の滅亡」「天地創造」「十戒」「エル・シド」「スパルタカス」「クレオパトラ」「史上最大の作戦」なども皆この二館の大画面で見たような気がする。
今はもうこの二館とも映画の上映はなくなり、映画と云えばシネコンという状況になってしまったが、エッセイの筆者と同じくいささかの寂しさも覚える。
ともあれ文化的な面で振り返ってみると、私を形作ったのは読書と映画とであったような気がしていて、何れも未知の世界への色々な扉を開けるきっかけを作ってくれたような気がしている。
🔘今日の一句
鬼ヤンマ辺り睥睨(へいげい)庭仕切る
🔘施設の屋上庭園、初めて出会った一輪のネコノヒゲ、英名もそのものズバリ、Cat's whiskersと云うらしい。猫のひげのように見えるのは雄しべ。