島根県津和野の奥にある、銅山の差配を江戸時代から担った一族の庭園「堀庭園」のパンフレットを知人から入手して、この地域に銅山が有ったことを初めて知った。
銅山は近くの石見銀山を含んだ地域として幕府直轄の天領だったようで、この一族は銅山の開発を担当する銅山師と天領差配(さはい)役を兼ねていたと記されており、写真を見ると豪壮な邸宅と見事な庭が残されており、当時の権威と富が想像出来る。
私の郷里に程近い山口県美祢市には、産出した銅を奈良・東大寺の大仏鋳造に使ったといわれ長い歴史を持つ長登(ながのぼり)銅山があるが、この一族はある時期からこの長登銅山にも関与していたようである。
日本の銅山と言えば古河財閥の栃木県足尾銅山、住友財閥の愛媛県別子銅山が有名で、何れも今では考えがられない程の鉱毒、煙害等の公害事件を引き起こしている。
足尾では有名な田中正造の明治天皇直訴事件、別子では精錬所を瀬戸内の小島・四阪島に移設するなど大きな社会問題になっていた。
古河グループ、住友グループ共にこの銅山が発展の礎(いしずえ)になった歴史がある。
ところで昨今、銅の値段が高騰しているニュースが散見され、世界の標準指標であるロンドン金属取引所(LME)の価格は需要、供給の両面から昨年同時期に比べ5~6割も上昇している。
この為日経新聞の記事によると、ダイキン、富士通ゼネラル、三菱電機などでは銅の使用量を低減しアルミニウム等に代替させる取り組みを加速させるとのことである。
この銅を値段の安いアルミに変える動きは家電業界などでは数十年来の課題であり、私の現役時代から続く取り組みといえるが、加工技術面や強度面がネックとなりなかなか進まない。
銅には加工のしやすさ、接合のしやすさ、アルミに比べた強度面の優位性等があり、導電性や熱伝導性も含めて得難い特質がある。
然し車の電動化等、脱炭素の動きの中で益々需要がひっ迫し銅価格は上昇傾向と予測され、代替技術がより必要になるのだろう。
銅山の歴史遺産からついあれこれと思い付くまま現在の銅の状況まで書いてしまった。
◎菊の仲間だろうか鮮やかな白、整った形、1輪だけで存在感がある。