北京の什刹海(シーチャーハイ)と京杭大運河

今、「北京食堂の夕暮れ」 沢野ひとし著  本の雑誌社刊   を読んでいる途中だが、イラストレーターの著者が中国各地を歩き回りその様子をイラスト付きで書いたもので、そのなかに北京の什刹海(シーチャーハイ)が以下のように紹介されている。

<<紫禁城故宮博物館から30分ほど歩いた什刹海は水辺の散歩コースで湖畔では柳が風に揺れ、都会の喧騒から離れた風情ある景色がひろがる。>>

私も上海に駐在していたとき休暇で行ったことがあるが北京には珍しい静かな水辺で、清の時代からの住宅街・胡同(フートン)も近くに点在し観光ルートになっている。

この本には書かれていないが、この静かな什刹海は世界遺産・京杭大運河の終着点に当たる。

中国の世界遺産万里の長城が名高いが、知名度は負けても規模からするとむしろこの大運河の方が大きいかもしれず実用の面では圧倒的に大運河の方が勝っている。

中国の地図を見るとわかるが、黄河、長江(揚子江)を始め当然の事ながら大半の川は西から東へ流れ海に注ぐ。この為東西交通に比べ南北の交通が不自由で、これを解消すべく各河川を結ぶ人工の大運河を掘削したものである。

南部浙江省杭州から北京迄8つの省を縦断している。

建設は紀元前5世紀頃から始まり7世紀隋の時代に工事は最盛期を迎え、13世紀元の時代には既に総延長2000kmに達したと言われる。

大運河は現在でも重要な交通手段の1つとなっており私も北の北京の他、南の蘇州でもその一部を見た事があるがこれを見ると中国の歴史はあまりに長く、持てるパワーは信じられないほど巨大であることが否応なく伝わって来る。