「中国銀河鉄道の旅」と映画「初恋の来た道」

この本の筆者沢野ひとしさんはイラストレーターで、特に中国に思い入れが深いらしく、中国各地を訪れたエッセイを色々書かれている。
「中国銀河鉄道の旅」もその例に漏れず、北はハイラルから南はマカオまで各地の旅エッセイである。
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基本は一人旅のようだが、
雲南省麗江から上海に向かう飛行機の中で知り合った、筆者が「キタキツネ」とあだ名で呼ぶ中国人女性と一緒に各地に行く話も色々と載せてある。
友人を交えた旅などで親交を深めていく中で、北京の町角を、白いセーターを着て曲がるときの仕草がキタキツネのような印象で、それから「キタキツネ」が定着したらしい。

「キタキツネ」のふるさとは東北部、黒竜江省の竜江県という場所で筆者は行き掛かりから成田~北京~ハイラルを経て列車で7時間かけて竜江に着き「キタキツネ」の出迎えを受ける。

ここでは高粱(こうりゃん)やとうもろこしなどの畑が広がりオート三輪が交通手段で、文中に〈周りの景色が「初恋のきた道」に似ている〉というのが何度か出てくる。

初恋のきた道」は20年前に初公開された私にとって忘れられない映画のひとつで中国映画の中では私のなかで一番かもしれない。
最初に見たのは上海だったか、日本か定かでないが後日NHKBSでも放映されたことがある。

監督はまだ巨匠とは言えない時代のチャン・イーモウ、主演はこれもまだ大女優とは言えなかった頃のチャン・ツイイーで、村の娘が都会から来た若い学校の先生に恋をし、苦心の末、初恋を成就させるストーリーだった。
中国映画の将来性を予感するような良い映像だった気がする。

ただこれには後日談があり、仕事で上海に駐在してた折り、この映画や主演のチャンツイイーが素晴らしかったことを私の通訳をしてくれてる女性に語ったところ、「チャンツイイーは不倫女優で嫌いだ」と大いに怒られた事がある。確かその相手が驚くことにチャンイーモウと言っていた。

旅の本から想い出の中国映画がよみがえってきた。

◎赤い南天の実に混じって白い実が成っている。葉の形は南天のようだが白い南天はあまり聞いたことがない。
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