角田光代(かくたみつよ)著「いきたくないのに出かけていく」スイッチ・パブリッシング社刊を読み終えた。
今まで角田さんの著作は全く読んだことはないが、映画にもなった「八日目の蝉」の原作者としては知っており、以前NHKTVの山番組で見かけてなかなか面白そうな人だなと思っていた。
図書館のエッセイの棚で題名に引かれて借り出したが、期待どおりの面白さで世界や日本の旅の中で経験したアレコレが力まずさらりと表現され、題名と違って旅が好きなことがにじみ出ている。
28章書かれている旅のエピソードの中のひとつで香港の出来事。
『朝食を食べに行ったお粥屋さんで、餃子を仕込んでいる女性店員が突然、お客にかまわず怒りだし独りで話し出し、更に満席のフロアを突き切って厨房前に仁王立ちして奥に向かって10分位怒り続け、再度作業テーブルに戻って餃子を包みながら20分以上叫び続けた。』
角田さんは、あんなに怒り続けることができるのは短気ではなく、香港人の気質に「おそろしいほど自分に正直」なところがあるのだろうと書いている。
私は現役時代中国・上海に駐在していたがこれと似たようないくつかの体験事例がある。
・交通の激しい交差点近くで道路上の中年女性が路線バスの運転手にバスを遮って怒って叫んでいる。交通の邪魔になっているがかまわず延々と叫んでいる。
・比較的外国人が多い地区の喫茶コーナーで中年女性が西洋人とおぼしき男性に向かって出ていけと叫んでいる。夫らしき人物が止めようとしているが、全く怯まず叫び続けとうとう西洋人は出ざるを得なくなった。
・私は当時現地の生産工場を担当していたがこの中には設計部門も含まれていた。
設計部門の業績評価で、ある女性の評価を落としたところ、その女性が私の処に来て泣きながら評価が不満なことを叫んでいる。中国人の管理職がなだめて帰すまで喋り続けた。
◎私も角田さんの意見に全く同感で、これ等はやはり「おそろしいほど自分に正直」な気質から来ているように思われるが、日本人の感覚からするとなかなか理解出来ないかもしれない。
ただそれは香港人だけでなく中国人全体にも言えるような気がして、むしろいい意味で痛快な気がしないでもない。
叫ぶのは私が経験した限り女性であった。
◎ホウレンソウを寒いなかで植えたが、さすがに発芽率が悪いなか頑張って成長しているものもある。