俳優・樹木希林さんについてはこのブログでも何回か書かせて貰っていて、そのプロフィールについては敢えて触れる必要がないと思うが、この本は今は亡き樹木希林さんが2012年都内「慶應丸の内シティキャンパス(慶應義塾の社会人教育機関)」で講演された内容を読みやすくまとめたものとのことである。
表題になっている「老いの重荷は神の賜物」という言葉は、樹木さんが講演の最初に朗読されたドイツ人作者の詩「最上のわざ」に出て来る言葉で、
~~老いの重荷は神の賜物。
古びた心に、これで最後のみがきをかける。
まことのふるさとへ行くために。
おのれをこの世につなぐくさりを少しずつはずしていくのは、真にえらい仕事。
こうして何もできなくなれば、それを謙虚に承諾するのだ。~~
樹木さんの文学座の大先輩・長岡輝子さんは、宮沢賢治の朗読とこの「最上のわざ」の朗読をライフワークにされていたそうである。
しかし当時全身癌で放射線治療中の身で、講演でこのような内容を話し朗読する樹木希林さんの精神力には脱帽するしかない気がしている。
講演は、闘病生活のあれこれ、自分の周りのがん患者のこと、女優の道を振り返って、老いのこれからをどう生きるかなど、多岐にわたるが最後に質疑応答がある。
色々な質問が出て、最後の質問は
「どうして役者になろうと思われたんですか?」
樹木希林さんの答えの概略は
・ただ行きがかり上だ。
・父親のすすめで薬剤師になろうとしたが理数系がダメで勉強する気が起きないなかで、事故で足を骨折して受験に間に合わなくなった。
・そんな中広告を見て文学座を見に行き、すてきな人がいっぱいいるのに出会い、いいなあと思い役者の道に進んだ。
・その答えの延長線上で文学座の先輩・杉村春子さんの思い出話が出てくる。
🔘苦を苦とだけとして捉えず、自分に振りかかる色々なことを常に前向きに変えて考え行動しようとする姿勢が随所に出て、樹木希林さんの個性が感じられる。
🔘今日の一句
朝(あした)には明日(あす)の風吹け夜半の秋
🔘施設介護棟の屋上庭園、グラジオラス