「図書館への切なるお願い」

施設の図書室に置いてある月刊誌・文藝春秋4月号に歴史小説分野での直木賞作家・今村翔吾さんが「図書館への切なるお願い」と題する文章を寄稿されている。

その要旨は以下のような事と思われる。

『出版不況と言われる昨今の状況の中で、話題となった作品が図書館で何冊も所蔵され無料で大量に貸し出される現状が、書店での購買動機を奪い本に携わる人の生活を圧迫しているのではないか、本を教育的価値があると認め図書館があるなら国も含めてお互いに考えて欲しい』

以前作家・塩野七生さんが書かれた本の中に確か「本を購読してくれる読者のお陰で次の作品に向けて調査や構想を練ることが出来る」という趣旨の事があったが今村さんの内容は塩野さんが言っているようなことも包含しているのだろう。

私の読書人生を振り返ってみると

・子供の頃は故郷の図書館に毎日のようにお世話になった。

・社会に出てからは随分書店で本を購入し家に置き場が無くなるまでになった。

・その後は特別な物のみ購入して大半は図書館から借り出すようにして現在に至っている。

従って図書館から借り出すことの有難味も充分理解出来るし、本を創り流通させる側の現在の苦境も分かる気がしている。

本がもたらす楽しみや教育的価値からすると本を創り流通させる側が疲弊するとこれらの根本が揺らいでしまい将来に禍根を残してしまう。

本好きで書店の経営もされている今村さんは図書館と書店、作家と読者、出版社と取次等々複雑に絡み合っているなかで色々なアイデアも提案されているのだが、例えば図書館が購入する場合は特別価格を上乗せするなどもその一つである。

何れにせよ出版文化を守るため国も含めた取り組みが必要な時期なのかもしれない。

🔘健康公園の桜並木は花が完全に散り、今はシベが歩行路にびっしりと落ちて時折道に当たって小さい音が聴こえる。

 

【桜しべ降る音(ね)踏む音(おと)朝歩き】

 

🔘施設の庭の生け垣の隅でひっそりと咲いているのはシラー・カンパ二ュラータと思われる。