映画「ゼロの焦点」

1909年生まれの作家・松本清張の生誕100年を記念して2009年に公開された映画「ゼロの焦点」がNHKBSプレミアムで放送され録画して観終えた。

松本清張作品は推理小説時代小説を問わず若い時期に数限りなく読んだ気がしてこの映画の題名にも記憶があったが、ストーリーは全く記憶に残っておらずただ北陸の景勝地能登金剛が舞台だということぐらいだろうか。

記憶にないことの要因のひとつが題名の「ゼロの焦点」という言葉にあるのかもしれない。「波の塔」「砂の器」「中央流沙」とか松本清張作品には分かりにくい題が多いが、売れっ子作家になってからはストーリーより先に掲載先や題名が決まってしまうことから起こっているという説がある。

新婚早々の夫が失踪したことの謎を追う主人公を演じるのが広末涼子、夫役が西島秀俊、戦後の占領期にやむを得ず米軍相手の売春で身を立てていた女性を、中谷美紀木村多江という配役である。

のぼうの城」で初めて出会った監督の犬童一心さんは鉄道、路面電車、バス、町並みなどの時代風景を見事に再現して作品に臨場感をもたらしている。

松本清張作品によくみられるような、現在の地位や幸せを守るため過去の不遇な境遇を隠そうとして罪を犯していく犯人と、夫の失踪を機にその罪を暴いて行く事になる女性同士が交錯するストーリーである。

日本が経験した敗戦という社会的な激動を知らない世代が増えた中で、推理小説の謎解きの面白さとは別の負の歴史を考えさせる作品でもある。

映画の終わりに中島みゆきさんが作詞・作曲した主題歌「愛だけを残せ」が中島さん自身の歌声で流されたが、映画の重苦しい雰囲気をその声がわざと一挙に吹き飛ばす貴重な役割を担っているように思えた。

この映画と同時にNHKBSで放送された新日本風土記スペシャル・「松本清張 鉄道の旅」も清張作品の全体を知る上で充分に見応えがあった。

 

【マスクでも変わらぬ辛さ花粉症】

 

🔘施設の図書室出口にひっそりと小さく咲いているツルニチニチソウ