新聞の文化欄で半世紀以上聞いたことが無かった懐かしい言葉に出会った。
「かいぼり」である。漢字で書くと「掻い掘り」でため池などの水を抜いて泥を掻き出して池の点検や水量を確保することを言い、古くから行われてきた。
記事は『都会でも楽しく「かいぼり」』と題して2022年にサントリー地域文化賞を受賞した団体の理事長が、近年都市部の水辺の生態系を回復させる手段として現代版「かいぼり」の魅力や楽しさを説明されている。
現代版「かいぼり」は外来生物の駆除や水辺の環境維持の目的も兼ねて都市部の池での実施を進めているとのことである。
元々「かいぼり」は農作業の一環であり農閑期を利用して行い次の年の農業用水の確保を担保するものであった。
私のふるさと山口県厚狭では三年寝太郎伝説からくる寝太郎用水が厚狭川からの水を引き主要な地域の田畑を潤していたが、この恩恵を受けられない田畑は堤(つつみ)と呼んでいたため池からの水が頼りで、私の実家の田んぼも用水からのものと堤からのものと両方あった。
(余談だが昔から河川の恩恵を受けにくい地域での農業用水の確保にはため池や堤が多く用いられ、例えば弘法大師が作ったとされる香川県の満濃池は有名である。ため池は西日本に多く農水省の調査では全国で15万4千ヶ所以上も有ると云われる)
この堤の恩恵を受ける農家が出て定期的に「かいぼり」が行われ、このとき子供たちには堤に生息する大きな鯉などの魚を捕まえる面白いひとときがあった。
半世紀前には生態系といった意識はなく農作業という意識が全てだったが、同時期の農作業として用水の方でも定期的に「川浚(さら)え」という行事があり、用水の流れを確実にするための清掃整備作業が行われた。
現在地球温暖化の影響で洪水の危険性が増えたことが話題になるが、それと同時に、
・耕作放棄地の増加やこれに関連して堤やため池、水田の減少による地域の保水能力低下
・川浚えを含む河川の保全不足による排出能力低下
など農業及び農作業の衰退が治水に悪影響を及ぼしていると思えてならない。
🔘カリン(花梨)という植物を初めて知った。
俳句サークルのメンバーの方から健康公園に実がなっていることを教えてもらい探して撮影したが、梨という字が付くのがわかるような、樹や枝に比べ実も大きくて多い。
生では食べられないようで焼酎などに漬けたり漢方の咳止めなどに用いられるとのことである。
【鈴なりの 花梨(カリン)子の如(ごと) 樹は嬉し】
樹は少し斜めに育っている
片手の掌に丁度納まるくらいの大きさ