「明治国家と万国対峙・近代日本の形成」

勝田政治著「明治国家と万国対峙・近代日本の形成」角川選書 刊 を読み終えた。

著者の勝田政治さんは日本近代史を専門の歴史学者で明治国家や大久保利通に関する著書などが数多い。

「万国対峙(ばんこくたいじ)」とはあまり聞きなれない言葉だが、幕末に幕府が欧米列強と結んだ不平等条約明治新政府が引き継ぐなかで、維新政府の大目標として、欧米諸国と向かい合って立つ(対峙)ことの出来る国力を有する近代国家を作りあげ、将来の条約改正に至ることを国家の大目標にしたことを表現している。

ちなみに条約改正はこれらのあらゆる努力を経た国力増強の後、明治44年(1911)にようやく実現するが、戊辰戦争終結して明治に改元となって実に40年以上経過していることになり、国家の不利な条約を変えることの難しさとこれに挑んだ先人の努力に頭が下がる。

国家の大目標である万国対峙を巡り新政府内では

・軍事優先国家ー西郷隆盛

・経済優先国家ー大久保利通

・立憲政治優先国家ー木戸孝允

維新の三傑と呼ばれる三名が体現した国家像があり、これらの相克それぞれの死を越えて、伊藤博文山県有朋黒田清隆松方正義井上馨大隈重信等々に引き継がれ実現に向けて国家を挙げて邁進することになる。

それぞれに大きな問題点や対立を抱えながらも「坂の上の雲」目指して邁進する日本史上にとって特筆すべき時代であったことがよく理解できる。

 

【明治には  坂の上なる  秋の雲】

 

🔘一昨日須磨経由で旗振山へ登って書き忘れていたのだがこの須磨浦公園近くに江戸時代の俳人与謝蕪村の句碑があり、あの有名な俳句

【春の海  終日(ひねもす)のたり  のたり哉】

は須磨の海を詠んだのだと初めて知った。

私の場合は秋だったが確かに「のたり」を感じる海だった。

 

【須磨の秋  時移りても  海のたり】