NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は史実と創作の境界があいまいなところがあり好き嫌いが分かれそうなドラマである。
その創作の部分で、登場した時点から特異な存在感を放っていたのが「殺し屋の善児」で、頼朝の子・千鶴丸や北条義時の兄・宗時を皮切りに次々と暗殺を実行し、最後は二代将軍・頼家を暗殺する途中、弟子の手にかかって殺された。
仕事を指示されると「へえ」と答えて飄然と去り仕事を淡々と片付ける。「ゴルゴ13」は殺し屋のオーラが出まくっている殺し屋だが、何か善児の方が本当の殺し屋のように見えてくる。
この善児を演じていたのが個性派俳優の梶原善(かじはらぜん)さんで飄々とした演技で時折TVでも見かけていたが、善が善児と同じであり作者の三谷幸喜さんは梶原さんありきでこのキャラクターを作ったのかもしれない。
月刊「文藝春秋」最新10月号では「巻頭随筆」にその梶原善さんが「三谷さんと善児と出会うまで」と題して大変面白いエッセイを書かれている。
それによると
・善児はSNSで話題となりトレンド入りしている。(これはやはりそうかと納得)
・三谷さんからの注文は「殺気がなく、とても殺し屋に見えないけど、いざとなったら殺気みなぎる感じ」であったとのこと。(注文通りの仕上がり)
・三谷さんとは知り合って38年になる。
・三谷さんは諦めない人でその努力で日本で一番チケットの取りずらい劇団(東京サンシャインボーイズ)を主宰している。
・僕は架空の人物・善児として鎌倉時代を「のたりのたり」と駆け回らせて頂いた。
🔘この「のたりのたり」の表現が秀逸で、何より残念に思うのは、このエッセイを善児が生きて暗殺を続けている最中に読みたかったことである。
🔘これは俳優稼業に限らないが個性的であることが如何に大切か教えてもらっているような気がする。
🔘昨日の日曜午後、健康公園ではもうじき大型台風が来る予報で、多分人がいないのではと思い歩きに出掛けたが、暗い曇り空ながらそれを苦にせず子供の声が響いて、こちらも少し気持ちが明るくなった。
【颱風が 迫り来る日を 児等咲(わら)う】