長州ファイブと長州藩の「すごみ」

「明治の技術官僚・近代日本をつくった長州5傑」柏原宏紀著  中央公論新社刊を、読み終えた。

今まであまり知名度があったとは言えないが維新150年の節目で漸く光が当たり始めた近代日本の技術基盤つくりに貢献したイギリス密航5人組いわゆる長州ファイブの研究書である。

井上馨-藩上士出身 外務、大蔵大臣等歴任 予算制度創設 元老。

遠藤謹助-上士出身 造幣局長 近代造幣の父 大阪造幣局桜の通り抜け発案。

井上勝-上士出身 鉱山頭兼鉄道頭 鉄道の父 鉄道事業に生涯を捧ぐ。

伊藤博文-百姓→足軽出身 初代工部卿、初代総理大臣、韓国統監 殖産興業推進

山尾庸三-百姓出身 工部卿 工部大学(後東大工学部)設立  工業立国の先駈け

排外攘夷思想が盛んな折り国禁を犯してまで自ら希望して密航する個人の努力や能力は後の活躍とも重ねて素晴らしいものがあるが私はその裏面にあるこれを決定推進した長州藩の組織自体に「凄み」を感じてしまう。(郷里への身びいきが多分にあると思うが。)

1、当時の身分秩序からすると同席することさえ憚る上士と百姓が能力次第で同じチームの同僚に編成される。

2、密航の決定は下関攘夷戦争前であり思想上はあり得ないはずのことが冷静なリアリズム、実利主義で実行されている。

長州藩が維新の主役になった要因はこの過程でも充分読み取れるがこの事は私自身、他にも色々あると考えており後日機会あれば書いてみたい。