「宮本輝~ 人間のあたたかさと生きる勇気と」」

図書館でたまたま見つけ借り出した「宮本輝~人間のあたたかさと、生きる勇気と」北日本新聞社刊を読み終えた。

この本は富山市にある「高志の国文学館」と「姫路文学館」が平成29年と30年に開催した作家・宮本輝に関する特別展「宮本輝~人間のあたたかさと、生きる勇気と」の解説図録で作家・宮本輝についてのガイドブックとなるように構成されている。

本の中ほどに作品を集中して紹介される箇所があり

宮本輝文学の誕生ー川三部作、3作

・短編の名作、5作

・長編の名作、19作

・大河小説「流転の海」、9作

が紹介されているが、今更ながらこれらの殆んどを読み終えていることに気付いて自分自身が驚いている。

巻末にある略年譜を見ると宮本輝さんは昭和52年(1977)「泥の河」で太宰治賞、翌昭和53年(1978)「蛍川」で芥川賞を受賞して世間に知られるようなり同年に後川三部作といわれるようになる「道頓堀川」を発表した。

私は丁度20代の終わりに差し掛かっていたと思うが、「泥の河」と「蛍川」が共に収録されている単行本を購入して読み耽り「この作家とは長い付き合いになりそうだな」と司馬遼太郎さんの本を最初に読んだ時と同じような感じを抱いたものである。

この「泥の河」はしばらくして小栗康平監督の手でモノクロ映画化され、私は東京出張中に赤坂の名画座で観たが、私の中で未だに忘れられない映画のひとつになっている。

この本の中では各作品を簡潔に紹介すると共にその作品の登場人物に作者が語らせている言葉ひとつを挙げている。その中で私の心に留めた二つの言葉

 

「田園発 港行き自転車」ー『好不調はつねに繰り返しつづけるし、浮き沈みはつきものだが、自分のやるべきことを放棄しなければ、思いもよらなかった大きな褒美が突然やって来る』

 

「花の降る午後」ー『人間には二種類ある。辛くて寂しくて哀しいことは、いつまでもつづかない。必ず終わるときが来る。その終わったときに、弱くなるか強くなるかの二種類だよ』

 

【桜木は寒暑に堪えて現在(いま)咲けり】

 

🔘胴吹き桜(ソメイヨシノ)のあれこれ