中島みゆき「ファイト」

家内の買い物のアッシー役で勤務中に、時間待ち喫茶店でインターネットを繰っていたら元週刊誌・サンデー毎日編集長と称される潟永秀一郎さんが歌手・中島みゆきさんを評した 『「日本のボブ・ディラン」の名曲の歌詞を読み解く』という文章に遭遇した。

前段で潟永さんは「中島さんは歌詞が凄すぎて」と言われているが私も全く同感で、中島みゆきさんは歌手としても凄いが、詩人、文章家としても一流に成れる人と思っている。

その中島さんの歌のなかで私も注目している「ファイト」を取り上げ、その成り立ちや中味について書かれている。

中島さんが深夜ラジオ「オールナイトニッポン」のパーソナリティーを勤められていたのは有名で、私も一部を聞いたことがあるが、歌詞の雰囲気と違うお茶目な話し方がとても印象に残っている。

「ファイト」の歌詞はその「オールナイトニッポン」に寄せられた少女の投書の内容からスタートしているようで、職場で自分のことを「中卒だから事務の仕事を任せられない」と蔭で言われたことを綴ったものらしい。ただその投書は「愚痴を書いてごめんなさい」で終わっていたとのことである。

中島さんは「偉そうなことを言っちゃえば」と断ったうえで「どういう経歴かというよりそこで何を学んだかが大切だ」「みんなが分かってくれなくてもあなたの良さを分かってくれる人はきっとどこかにいる」といった話をし、最後に「ファイト!」と呼び掛けたそうである。

〈ここまで書いて涙が出て来てしまったが、この年齢になって中島さんの言葉を聞くと、本当にその通りだと心から納得できる〉

「ファイト」の歌詞は番手毎に内容が変わるのが特徴で、

一番はまさしくこの投書者の世界。

二番は子供を階段から突き落とす女を見過ごして自分の不甲斐なさを「自分の敵は自分だ」と嘆く人。

三番は傷付いてもなお川を必死に遡る魚に例えたスポーツ選手の挑戦と敗れた姿。

四番はしがらみのなかで故郷を捨てたくても捨てられない人。

五番は男に自分の思いとは違うことを強制される女の人。

最後は小魚に託して諦めという鎖を身をよじってほどいていく姿を映して「ファイト」と繰り返し呼び掛ける。

色々な苦しい立場の人に唯同情するのではなく、それでも希望や未来があることを知らせる応援歌になっているような気がする。

 

【こころの詞  中島みゆき  沁みる秋】

 

🔘竜胆(りんどう)、家紋で有名な笹竜胆は源氏の系統で比較的多く用いられ、白旗の上に描かれ軍旗としても掲げられた。