映画「ケイン号の叛乱」

1954年のアメリカ映画「ケイン号の叛乱」がNHK BSプレミアムシネマで放送され録画していたがここにきてようやく観終えた。

観終わってなぜもっと早く再生しなかったかを悔やむような映画で最初から最後まで一度も中断せず食い入るように観てしまった。

番組表の題名を見て録画予約した際は、てっきり古代か中世の奴隷船か大航海時代のことだろうと思っていたが、映画の冒頭の字幕の中で、アメリカ海軍と出てきてのっけからビックリしたが続いて「この映画は事件ではなく人間のありようを描いている」と出てきたことが映画を観終わって特別響いてきた。

アメリカ海軍が日本と太平洋戦争を戦っている当時の老朽駆逐艦「ケイン号」を舞台に展開するが戦闘シーンはほとんどなく、また台風に遭遇するシーンなど最近の迫真の撮影技術やCGを観なれたものからすると物足りなさは残る。

しかし冒頭の字幕に表された人間のありようの描写は善悪を超越して素晴らしく、原作がピュ-リッツァー賞を受賞したベストセラー小説だと後で知って納得した。

ストーリーには深く入らないが、神経を病み独善的な艦長が赴任してきたことで起きる様々なトラブルと部下との葛藤、台風に遭遇した極限状態で遂に部下が艦長を拘束して指揮を代行、その後この事が軍法会議で叛乱として裁かれることになる。

映画「カサブランカ」で男の中の男を演じたあのハンフリ-・ボガードが、偏執的な艦長を主演していて別の一面を見せて素晴らしい。

他の出演者の中では軍法会議で、叛乱したと疑われた副長達の弁護人役のホセ・フェラーが、複雑な心の内を見事に表現している。映画「アラビアのロレンス」ではオスマントルコ軍の病的な将軍を演じて気味が悪いくらい役に嵌まっていた記憶がある。

叛乱と認定されると絞首刑になる究極の局面で当事者や周辺がどのように行動するか、またどのように行動すべきか、後日の軍法会議での各人の証言態度と併せ考えさせられ記憶に残る映画のひとつになった。

🔘今日の一句

 

母の待つ藤棚ありし田舎駅

 

🔘施設の庭のシラン(紫蘭