「H3ロケット 失敗からの再起 技術者たちの348日」

NHKスペシャルで放送された「H3ロケット 失敗からの再起 技術者たちの348日」を録画再生して観終わった。題名に牽かれて録画しておいたのだが期待に違わず質の高いドキュメンタリーだった。

長い間打ち上げの成功を続けていたH2ロケットのコストダウン後継機H3が、2023年3月7日出鼻を挫かれエンジントラブル(第二エンジンに点火せず)で打ち上げに失敗してから、2024年2月17日に成功するまでの純粋に技術面に絞った追跡で、その間の事情を詳しく知ることが出来た。

昨年の失敗の時の落胆と今年の成功の時の感激は私自身の記憶に生で残っている。

このプロジェクトは国を挙げてのものなので当然この裏には政治的な動き、国際関係、経済的な損失などさまざまなことがあったはずだが、これらを除外して純粋に技術面に絞った番組構成が奏功した気がする。

この番組で私自身が得た新しい知見と深く感動した主な点は以下の通り。

・私が現役時代携わっていたのは汎用の量産品であり、不具合が発生した場合の原因究明では実際のものを用いて再現テストをすることが可能だったが、ロケットのような一品もので特別高価なものはどうするのかに興味があったが、例えばユニットの段階でストレスをかけて検証したり、各々の段階で想定以上の負荷(例:過剰な電圧や電流)がかかった場合の余裕度合いを検証していて、納得した。

・ただ完全な再現試験は出来ないため想定される要因は不確かであってもすべて対策が取られておりこれも充分理解できる。

・不具合や故障事故等の解析には色々な手法が開発されているが、ここではFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)という手法が使われ、ロケットのエンジントラブルを部品段階まで追求していくが、私達もこの手法を用いて不具合の解析を進めたことが多々あり、懐かしいと共にこういう場合でも使われていることに感動した。

・このプロジェクトのリーダーの行動がかなり突っ込んで追跡されているが、内心は相当なプレッシャーと葛藤があったと思われる。にもかかわらず落ち着いて部下を掌握し確認を一歩一歩進める姿になるほど人を得てるなと唸ってしまった。

・プロジェクトの電気系統の責任者の言葉に共感する。

「失敗をすると実はめちゃくちゃ勉強になる~~失敗することで蓄積される経験というのは、ただ成功している時より、普通に淡々と進んでる時よりはるかにかけがえのないものになる。失敗をした時には失敗を失敗で終わらせないことが大事」

🔘このH3ロケットの成功で日本が世界の宇宙産業の一角に踏みとどまることが出来たことは明らかで、日本の将来にとって何より有難い気がしている。

🔘今日の一句

 

稜線に風車(ふうしゃ)立ちん坊山笑う

 

🔘施設介護棟屋上庭園の形が珍しいオオツルボ(シラー・ペルビアナ)