「国民国家と戦争・挫折の日本近代史」

加藤聖文(かとうきよふみ)著「国民国家と戦争・挫折の日本近代史」角川選書刊 を読み終えた。

国民国家とは一般的に国家内部の全ての住民を国民として統合することによって成り立つ国であり、独立革命によって成立したアメリカ合衆国フランス革命によって成立したフランス共和国などがそのはしりと云える。

またそれは民主国家でも独裁国家でも体制を問わず国民を基盤としていることが必須で、国民はなにかを契機として意識的に創られそれは多民族国家でも変わらない。

また国民国家では、国民は国家を制御しようとし国家は国民を統制しようとして緊張関係にあり、この両者の力関係によって国家の性格が大きく変わってくる。

この本は日本に於ける国民国家の成立を明治維新として捉え、開国から敗戦までの日本の近代を国民国家という切り口、視点から解釈しようとしたものである。

その為幕末維新の状況から元老政治、政党政治天皇中心の国体、植民地政策、軍部主導での戦時体制と一連の日本の歩みが説明されることになり、どうしても内容が平板になるきらいが出てくるが、そのなかで著者の言葉が特別刺さった箇所は以下の通りで、少し長いが核心的な部分なのでそのまま引用する。

戦後になって満州事変は軍部の独走の始まりと位置付けられるが、実際は国民が熱狂的に支持していた。~~~国民にとって満州事変は受け入れられる戦争であって、陸軍にとっても戦線の拡大は国民の支持拡大に比例していたのである。

このような風潮は日中戦 争でも変わらなかったが、戦争が長期化するにつれ楽観的な雰囲気は霧消してしまった。しかし国民が気づいた 時には後戻り出来ない状態になるのである

満州事変から日中戦争を経て太平洋戦争へいたる歴史は必ずしも「軍部の独走」では片付けられない。昭和の戦争は指導者主体のこれまでの戦争と異なり、国民が積極的に関与した戦争であったのである。』

🔘将来来ないとも限らない戦争への道を阻む上でこころしておかなければならない意見である。

🔘今日の一句

 

若葉雨紺青緑際立たせ

 

🔘健康公園のカナメモチ(要黐)の花