中断中のひとりごと・李登輝「台湾の主張」

台湾の元総統・李登輝さんについては、その死亡の報道を聞いて2020年8月1日のこの日記に「李登輝さんの訃報」を書いた。

戦後、日本の支配から脱した後、本土からの蒋介石・国民党由来の支配が続いたなかで初めての台湾出身の総統として、台湾が民主化するキーパーソンの役割を担った人で、先の日記にも書いたが外国人政治家の中で最も尊敬する人物の一人である。

先日、近所の図書館を訪れた折り、今年の亡くなられた方の、著作を集めたコーナーが設けられており、李登輝さんが総統在任中の末期に書かれた「台湾の主張」PHP研究所刊、が目に留まりこれも何かの縁と思い借り出して読み終えた。
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この日本人向けの本は「The Road to Democracy」として英語版も発行されているらしい。

李登輝さんは以前、私もはっきり記憶しているように、司馬遼太郎さんとの対談等で台湾が長い間、自分達の国を自分達で治められなかった事を「台湾人に生まれた悲哀」と語られていたが、この本の冒頭でそれを取り上げ、今の台湾と自分自身について徐々に考えが変わってきて、
「台湾という幸福、台湾人に生まれた者の幸福を見出だすことができる」と書かれている。

全編を通して言えるのは約20年前に書かれたものながら、中国本土に対する見通し、本土と台湾との両岸関係、国際情勢など、全く今でも色褪せておらず、如何に先を見通していたか驚いてしまう。

思想遍歴に始まり、中国、アメリカ、日本各々に望むこと
更にはアジアとの関係、二十一世紀の台湾の展望などが書かれていくが、、かつて日本で学び、一時期日本人であったこと、日本の戦後の高度成長を外から見てきた事を踏まえた「いま日本に望むこと」は耳が痛く、また現時点の状況から考えても傾聴に値する。

そのポイントは
・日本の停滞の最大の源は日本社会が多様性を失っていることにある。
・日本には充分な強さがあることを認識すべき。多元的で深みのある文化、強い産業や企業、活力ある人材等。
・国際政治、安全保障で現実性のある行動を。
・もっとアジアに目を向ける。

また、「信念をもって取り組む」の章では
「日本の場合、明治維新の後の留学生や政治家たちが外国の地に立ったときも、なんとか日本をよくしたいという信念をもっていたのである。さらには、終戦直後の日本人が外国で母国を思いながら活動を再開したときも、その信念は強固なものであったはずである」
と述べられており日本の実情を理解し、日本を思う李登輝さんの心情が溢れ出ている。

◎今日の二上山葛城山金剛山と連なる南河内の山々は、冬の晴れの朝らしく、もやがかかっているように美しい。
金剛山のホームページを見るともう5cmの積雪と霧氷がみられるらしい。
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