日経新聞の文化欄に近現代日本文学研究者の川崎 賢子(かわさきけんこ)さんが「李香蘭 日系紙のスクープ」と題して、
旧満州国に移住した日本人の両親の元に生まれながら戦争中、国策の中で「日本語が上手で日本びいきの中国人女優」を装うことを強いられた李香蘭さんについて、日中戦争当時の1941年には既に複数のローカル新聞で日本人であることをスクープした報道があったことを紹介されている。
尚、川崎さんには「もう一人の彼女 李香蘭/山口淑子/シャーリー・ヤマグチ」岩波書店刊 という著作がある。
当時の中国人日本人共に、彼女は中国人と思っている人がほとんどで、終戦後には中国人売国奴・漢奸(かんかん・漢民族の裏切り者)として処刑されそうなところ、間一髪で証明書が届き帰国出来た有名なエピソードがある。
その後本名の山口淑子(やまぐちよしこ)で参議院議員に当選された。私の母親が「李香蘭」と言っていたのが記憶の底にある。
私の「李香蘭」のイメージは何と云っても歌われていた戦前の二つの歌謡曲から来ている。
一つ目は夾竹桃のなかまで夜に香るといわれる花、「夜来香(イエライシャン)」
きれいなメロディーで色々な歌手がカバーされているが、本人の歌唱は別格としてやはりテレサ・テンさんの歌が一番沁みるような気がする。
二つ目は「蘇州夜曲(そしゅうやきょく)」
蘇州は長江(揚子江)の南、いわゆる江南にある古代「呉(ご)国」の都で、歌詞にもあるように水郷の街並みや歴史建造物、庭園などが有名な観光都市。
♪︎♪︎水の蘇州の花散る春を惜しむか柳がすすり泣く♪︎♪︎
古来から中国の詩に詠われる「江南の春」を体現する街で私にとって何度も訪れた懐かしい場所でもある。中国では河畔に多くの場合柳が植えられている。
YouTubeを見ていると美空ひばりさんを始め色々な人がカバーしているがやはりしっくり来るのは本人の歌唱で次に良いと思ったのが夏川りみさんだろうか。
日本が満州事変を経て大陸に作った国家・満州国は色々な人の運命に大きな影響を与えた。
関東軍将兵、満鉄職員、満蒙開拓団、移住者、協力した中国人等々、有名な人物として清朝最後の皇帝で後に満州国皇帝として即位した溥儀がいる。
李香蘭さんもその一人になるのだろう。結果として大陸に骨を埋めることになった日本人もたくさん居られる。
◎歯医者の帰り、空き地に咲くタンポポの仲間?
蝶が花の蜜をとりに来ていた。